2005年12月13日(火)「しんぶん赤旗」

温暖化防止国際会議

京都議定書 本格稼働へ

「13年以降」も米含め対話


 【モントリオール(カナダ)=鎌塚由美】十一月二十八日からカナダのモントリオールで開かれていた地球温暖化防止のための京都議定書締約国会合(COP/MOP1)と気候変動枠組み条約締約国会議(COP11)は十日、京都議定書を本格稼働させ、「ポスト京都」(京都議定書の目標達成期限の二〇一二年末以後)の対策をめぐる「対話」を米国や、議定書で削減義務を負わない発展途上国を含めて進めていくことを決定しました。

 議定書から離脱したブッシュ米政権は、議定書後の次期枠組みの議論への参加を拒否し、議定書つぶしを狙いました。しかし国際社会は京都議定書を強く支持。完全孤立は避けたい米国も含む討論の場が設けられることになりました。

●二本立てで

 温暖化は確実に進んでいます。環境保護の国際非政府組織(NGO)の世界自然保護基金(WWF)の〇五年の報告によれば、今年は史上最も暑い年であり、九月に衛星が撮影した北極氷原の範囲は記録上最小となっています。

 今回の会合でネパール代表は、ヒマラヤの氷河が急速に後退しているとし、「環境生態系だけでなく、水源、生物多様性、農業、人々の健康に影響を与えている」と訴えました。インド洋の島国モーリシャスの代表は、海面温度の上昇とハリケーンの関連に言及。すでに起こっている温暖化の影響への対策を訴えました。

 今回の会議では、(1)議定書を批准した当事国(百五十六カ国・地域)が議定書を本格稼働させ、一三年以降の第二約束期間の温暖化防止策についても来年五月から協議を開始する(2)米国など議定書の当事国でない国も含めた枠組み条約(百八十九カ国・地域)が非拘束的な「対話」を始める―という二本立てで温暖化防止の取り組みを進めることが決定されました。

 一九九七年に調印された京都議定書は、先進国の温室効果ガス排出量を〇八―一二年(第一約束期間)の間に九〇年比で5%以上削減することを義務づけています。ブッシュ政権は〇一年、議定書からの離脱を宣言。議定書の発効が危ぶまれていました。しかしロシアが批准を表明し、今年二月十六日に発効しました。

 議定書発効後、初となる今会議は、京都議定書の運用ルールであるマラケシュ合意を採択し、議定書を本格稼働させました。

 議定書締約国はまた、一二年までの取り組みと一三年以降の対策の間に空白を設けないことで合意しました。

 WWFのモーガン事務局長は、この合意によって、温暖化防止ビジネスの将来性が確保されることになり、「産業界への重要なシグナルとなる」と指摘しました。

●離脱できず

 ブッシュ政権は、最大の温室効果ガス排出国として議定書から離脱するだけでなく、今後の法的拘束力のある温暖化防止対策をつぶそうと画策してきました。

 自らも加わる枠組み条約の具体化として温暖化防止の取り組みを「議論」することさえ拒否。欧州委員会のディアス欧州委員(環境担当)は、米国が七月の英国での主要国首脳会議(G8)では「温暖化防止のための長期的で協力的な議論」をうたう宣言に合意しておきながら、なぜ今回の会合で同じ文言の決議案に賛成できないのかと指摘しました。

 交渉大詰めの九日の協議では、ワトソン米代表は非公式協議から退席することまでしました。しかし最終的には話し合いの大枠から完全に離脱することはできず、「対話」に加わる決定に合意せざるをえませんでした。

 会議には米国から多くの市民が参加。国際NGO「CAN」の日刊ニューズレター「ECO」は、「今会議での米国の市民社会の力強い存在は、北米大陸で会議を開催した戦略的価値を強めている」と書きました。各州や地方都市の代表、上院議員だけでなく、クリントン前大統領も会場に現れ、京都議定書の意義を強調。「米国対世界」ではなく、「ブッシュ政権対世界」を印象づけました。


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