2005年12月10日(土)「しんぶん赤旗」

シーレーン防衛へ「改憲」

“中国は現実的脅威”

前原代表、米で講演


 訪米中の民主党の前原誠司代表は八日(日本時間九日)、ワシントンの米戦略国際問題研究所(CSIS)で「民主党のめざす国家像と外交ビジョン」と題して講演。ペルシャ湾からマラッカ海峡をへて日本に至る「シーレーン(海上交通路)」防衛に関し、自民党政府が役割分担している千カイリよりも遠くの海域まで日本が「役割を果たすことが重要だ」として、そのために「憲法改正と自衛隊の活動・能力の拡大が必要になる」とのべました。


 前原代表は海外での武力行使を可能とする集団的自衛権の行使についても「(行使できるよう)憲法改正を認める方向で検討すべきだ」とのべました。

 また、同党の外交・安全保障政策の冒頭に「日米同盟の進化を推進する」と宣言。米軍再編とそれに伴う基地再編について、「政治がリーダーシップを持って進めることも重要だ」とのべ、基地強化の押しつけを推進する構えを示しました。

 これに関連し、米陸軍第一軍団司令部のキャンプ座間への移転は「日米安保条約の範囲を超えている」とし、日米安保再定義の必要性にも言及しました。

 アジア近隣諸国との関係について「日中関係が良好であることは、日米関係をより強固なものにし、アジアの繁栄をいっそう高める」と表明。アジア諸国との関係が悪化している小泉外交を「異常事態」だとして、首相や外相などは靖国神社に参拝すべきでないとのべました。

 一方、中国の軍事力については「現実的脅威だ」と表明、「対話と関与、抑止」の立場で領土・海洋権益の問題でもきぜんとした対応をとるよう主張しました。

 東アジア共同体の問題についても経済的、軍事的側面で「米国を排除すべきでない」との持論を展開しました。

■民主党の政策もタカ派色

 民主党の前原誠司代表が訪米先で行った講演は、自民党国防族と変わらないタカ派の前原氏の持論を色濃く反映したものとはいえ、党の外交政策と位置づけられているだけに重大です。

 前原氏は講演で、中東からの原油輸送ルートなどを対象とするシーレーン(海上交通路)の防衛について「一千カイリ以遠をアメリカに頼っているが、日本も責任を負うべきだ」と述べ、そのために集団的自衛権を行使できるよう憲法改定を主張しました。

 前原氏は九月の代表就任の会見で「私の従来の意見は(憲法)九条第二項を削除して自衛権を明記するものだ」と述べ、党内の改憲論議の加速を指示してきました。代表就任後初の訪米で前原氏は、その立場をさらに明確にし、憲法九条の「歯止め」を取り払い、海外での武力行使に道を開くメッセージを米国に送ったのです。

 外交政策を述べた講演で貫かれているのは、異常な日米軍事同盟の絶対化です。

 民主党は今年五月、岡田克也前代表のもとで党の外交・安全保障政策ビジョンを発表。日米同盟を「アジア太平洋地域の安定の要」と位置付ける一方で、「アジアとの関係」にも言及していました。

 ところが、前原氏の講演では、「日米同盟の進化を推進」とまで踏み込み、中国について「経済的にも軍事的にもいっそう力をつけてきている状況が出現している。これは現実的脅威だ」と“中国脅威論”を展開しているのです。中国が東シナ海で進めるガス田開発には「きぜんとした対応が重要だ」と敵対的対応を求めています。東アジアサミットでは「米国は排除されるべきではない。米国抜きでアジア経済の発展はありえない」と米国の参加を促しています。

 焦点の米軍再編問題ではどうか。日米安保条約で定めた「極東の範囲を超えている」として、「条約の解釈に齟齬(そご)をきたさないか、明確な説明責任が問われている」と政治のリーダーシップで、日米安保再定義まで求め、いっそう密接に米軍再編の機能強化を求めています。

 前原氏が講演で掲げた内容は、米軍基地の再編・強化にたいして全国でわきおこる自治体・住民の批判の声に逆らうだけでなく、アジア諸国が警戒している自衛隊の海外派兵を拡大する点で、大きな矛盾を抱え込むことになります。

 前原氏は、訪米につづいて中国訪問を予定していますが、訪中前の講演でこのような主張をしたことは、中国はじめアジア各国の批判をまぬがれません。(高柳幸雄)


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