2005年12月9日(金)「しんぶん赤旗」

米のイラク戦争は国際法を侮辱した国家テロだ

ノーベル文学賞受賞のピンター氏


 【ロンドン=岡崎衆史】2005年のノーベル文学賞に選ばれた英劇作家のハロルド・ピンター氏(75)は7日、ストックホルムのスウェーデン王立アカデミーで録画ビデオを通じて記念講演し、米国の外交政策を広範にわたって批判。とりわけ、イラク戦争について、国際法を完全に侮辱した「国家テロだ」と断じました。


 「芸術、真実、政治」と題した講演で、ピンター氏は、「イラク侵略は無法行為、あからさまな国家テロであり、国際法の概念への完全な侮辱を示している」と指摘。さらに、多くの人々を偽りの情報で欺いた上、無差別殺りくをもたらすクラスター爆弾や放射性兵器の劣化ウラン弾なども用いて多数の罪のないイラクの人々を殺害したと非難しました。

 イラク戦争を始めたブッシュ米大統領と英ブレア首相については、「当然国際刑事裁判所(ICC)に召喚されるべきだ」と述べ、両首脳の行為は戦争犯罪や大量殺りくの罪に当たるとの見方を示しました。

 ピンター氏は、真実であると同時に誤りでもあることがありうる文学の世界と異なり、市民生活では、何が真実で何が誤りなのか尋ねなければならないと強調。イラク戦争開始の理由として米政府が主張した、イラクのフセイン政権の大量破壊兵器保有や、同政権のテロ組織アルカイダとの関係保持が「真実ではなかった」ことを示し、「政治家は真実ではなく権力とその維持に関心がある」と酷評しました。

 また、第二次世界大戦後の米国の外交政策に触れ、「世界であらゆる右派軍事政権を支援し、多くの場合、生み出してきた」と指摘。例として、インドネシア、ギリシャ、ウルグアイ、ブラジル、パラグアイ、ハイチ、トルコ、フィリピン、グアテマラ、エルサルバドル、チリを挙げました。

 その上でピンター氏は、「米国の犯罪は、系統的かつ継続的で、悪質で容赦のないものだった」にもかかわらず、米国が自らを「普遍的な善」と描き出す情報操作にたけていたため、事実がほとんど知られていないことに懸念を示しました。

 同氏は、「市民として、自らの生活や社会で真実を明らかにする断固とした、揺るがない強い知性の決意」を呼びかけ、こうした決意が実現しなければ、「人間の尊厳」を取り戻す希望はないと結びました。

 ピンター氏は現在食道がんで入院中で、ストックホルムで十日に行われるノーベル賞授賞式典に出席できないため、四日に録画されたビデオがこの日放映されました。


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