2005年12月6日(火)「しんぶん赤旗」

旧公団 空港会社部長を逮捕

成田官製談合

業者に予定価格漏えい

天下り状況で発注調整


 成田空港の電機設備工事をめぐる談合事件で、旧「新東京国際空港公団」(成田国際空港会社、NAA)側が、入札に参加する重電メーカーに予定価格の情報を教えた疑いが強まったとして、東京地検特捜部は五日、競売入札妨害容疑で、NAA安全推進部担当部長客野悦志(55)、同社施設保全部長伊藤貞夫(57)両容疑者を逮捕しました。


 客野容疑者は当時、旧公団で工務部電気課長を務め、伊藤容疑者は直属の上司の工務部次長でした。

 成田空港を舞台にした不正入札は、NAA幹部が刑事責任を問われる「官製談合」事件に発展しました。特捜部は旧公団側が受注調整を主導したとみて両容疑者を追及、メーカー担当者は引き続き任意で調べを進めます。

 両容疑者は調べに対し、容疑を大筋で認めていますが、共謀関係であいまいな点があるといいます。一方、メーカー側の担当者は談合を認めています。

 調べによると、両容疑者はメーカー営業担当者と共謀し、二○○三年七月から十二月にかけ、旧公団が発注した三件の受変電設備工事の競争入札前に、各メーカー担当者に受注予定社になったことを伝えた上、予定価格の情報を教えて入札を妨害した疑い。

 両容疑者は旧公団OBの天下り状況などを考慮し、受注予定社を決定。配分を決めた「割り付け表」を作成した上で、客野容疑者が予定価格に近い価格を漏らし、伊藤容疑者は事前に了承していたといいます。

 三件の工事は競争入札で、東芝、日新電機、富士電機システムズがそれぞれ落札。落札率(予定価格に対する落札額の割合)は97・8―98・2%の高率でした。いずれの工事も、三社のほか三菱電機、明電舎、日立製作所の六社が入札に参加していました。

 メーカー担当者の供述によると、通常の民間工事に比べ、旧公団発注工事の粗利益率は一・五倍だったといいます。


■民営化後も変わらぬ体質

 民営化によっても癒着の構図は変わらず、空港利用者が世界でも高い着陸料を負担させられている――旧「新東京国際空港公団」(現成田国際空港会社、NAA)発注工事をめぐる談合事件では、そんな実態が浮かび上がってきます。

 国土交通省の所管の特殊法人だった同公団は二〇〇四年四月、民営化され成田国際空港会社となりました。重電メーカー各社に入札予定価格を漏えいしたとされるNAA担当部長の客野悦志容疑者(55)は、旧公団時代から電気関係部署を中心に勤務していました。

 客野容疑者が旧公団入りしたのは一九七二年。工務部電気課長を務めたのは二○○二年六月からです。民営化した後も、今年六月まで電気グループマネジャー(課長級)で、電機設備工事の発注を取り仕切る立場でした。

 入札方法は旧公団時代も民営化後も、大型工事は一般競争入札のまま。受変電設備工事などの中規模工事は公募型指名競争入札が公募型競争契約(価格交渉)になるなど若干の変更がありました。

 しかしNAAによると、民営化後に発注された受変電設備工事は八件。落札率(予定価格に占める落札価格の割合)は、97・6―99・3%と極めて高く、平均は98・1%。特捜部が客野容疑者らの逮捕容疑とした旧公団時代の三工事の落札率は97・8―98・2%と民営化後も旧公団時代と変わらない高い落札率となっています。

 競売入札妨害罪の対象とするのは、国や地方公共団体など公の機関が実施する競売や入札。そのため特捜部は、民営化後も旧公団時代と同様の談合が続けられていたものの、立件対象にしなかったと思われます。

 空港整備などの原資となっているのは、利用者が最終的に負担する着陸料など。成田空港の着陸料は、今年十月に引き下げるまで世界一高く、国際的にも批判を受けていました。その背景の一つには、談合により工事費などが高くなったとみられます。(山本 豊彦)


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