2005年12月3日(土)「しんぶん赤旗」

耐震偽装 解明どこまで

安全より利益優先の構図


 一体どこまで広がるのか――。マンションなどの耐震強度偽装問題は、関係住民だけでなく国民の関心と不安を強めています。問題はどこにあるのか。住居の安全を確保する国の制度はどうなっているのか。しだいに明らかになってきた問題の構図をふりかえってみると…。


■事件の発覚

 耐震偽装発覚のきっかけは、ある設計事務所の告発でした。

 昨年一月、東京・渋谷区の「アトラス設計」社長が依頼を受けて、姉歯秀次一級建築士の構造計算書を調べたところ偽造を見抜きました。社長らは、建設会社の木村建設や、偽造の構造計算書にもとづいて建築確認を出した最大手の民間確認検査機関で、大手住宅メーカーが出資して設立した日本ERIなどに通告。しかし、どの会社も真剣に調査しないまま放置しました。

 この設計事務所社長は同じ民間検査機関の「イーホームズ」にも姉歯氏の偽造を報告。ことし十月になってイーホームズの内部監査でやっと調査がおこなわれ、発覚しました。この動きがなければ、いまなお住民は何も知らないまま、危険なマンションに住み続けていたことになります。

 とくに建築確認を出した物件に重大な疑惑が指摘されたにもかかわらず放置した日本ERIの責任は重いものがあります。

■圧力を受けた

 「鉄筋の量を減らせ」と指示され要求に沿わないと「他の設計事務所に仕事を回す」と圧力を受けた――。姉歯建築士は、構造計算書偽造の動機を、国土交通省の聴聞会(十一月二十四日)でこう語りました。当初は建築基準法の要件を満たす設計を提出したものの、木村建設などから何度も指示され「他の設計事務所に代えられて、仕事がなくなったら困る」と思い、偽造したというのです。

 姉歯氏にコスト削減を要求した木村建設の篠塚明元東京支店長は、衆院国土交通委員会の参考人招致(十一月二十九日)で「法令順守の範囲」としながらも「そのようなことを言ったかもしれない」と認めました。同氏は、日本共産党の穀田恵二衆院議員の追及に、同様のコスト削減を他の設計事務所にも求めていたことを認めました。このやり取りから建築業界のなかに、利益優先のコスト削減体質がまん延していることがうかがえます。

■検査機関や施工主の責任

 施工主の責任も重大です。ヒューザーの小嶋進社長は、構造計算書偽造を確認した関係者の会談(十月二十七日)で、イーホームズの藤田東吾社長にこういいました。

 「他の機関や行政で見抜けなかったものを公表し正義を貫いて何の意味がある。公表するならどんな弁護士を使っても徹底的にたたく」

 小嶋氏は「地震で倒壊したときに、調査し発覚したことにしたい」とまでのべたといいます。事実とすれば、安全よりも利益優先の本音丸だしです。

 もともと、ヒューザーは「広さ」「安さ」を売りにし、木村建設や、コンサルタント業務をおこなっている総合経営研究所と提携した活動をおこなっています。安全を軽視しても販売を重視する体質がいま問題になっています。問題は姉歯氏にとどまらない恐れがあるのです。

 建築確認で構造計算書の偽造を数多く見逃してきたイーホームズの責任も重いものがあります。同社の建築確認は「早い」ことが業界内で知られ、姉歯建築士はイーホームズに数多くの申請を出しています。

■国と政党の責任

 国も構造計算書の偽造という重大問題を通報されながら、機敏に対応しませんでした。

 イーホームズの藤田社長は、姉歯建築士が構造計算書の偽造を認めた翌日の十月二十六日、国交省の担当係長に次のような電子メールを送りました。「構造計算における認定プログラムの計算書が設計者により意図的に改ざん(偽造)された事実が発覚した。事態が重要なので特定行政庁(自治体)に通知する前に御報告に伺いたい」

 ところが十三時間後、同省から返ってきた返事は「課内で検討したが、当方としては、本件は申請者と貴社との問題であるとの認識で一致した。本件については当方に対し特に報告する必要はない」

 民間検査機関に建築確認をさせるようになった一九九八年の建築基準法改悪には「五十年ぶりの見直し」(民主党)、「二十一世紀に向けた大きな基準法体系の再構築」(自民党)などとして日本共産党以外の各党が賛成しました。

 日本共産党は、当初から中島武敏衆院議員(当時)が、営利を目的とする指定確認検査機関では競争が激しくなった場合に「安かろう悪かろう」の「手抜き検査」になる恐れがあると指摘。さらに緒方靖夫参院議員は、「指定機関から建築主事に報告はあるが必ずそれを建築主事がチェックすることにはなっていない」「事実上、民間任せになってしまうおそれがある」と、制度の不備を指摘していました。

 政府は今回の事態に立ち至ってようやくその不備を認め、北側国交相が穀田議員の質問に、「特定行政庁と指定検査機関の関係を見直すべきだ」と、見直し方針を示さざるを得なくなりました。

 民間の確認検査機関にはゼネコンや住宅関連企業などが出資した株式会社が多く、建築確認申請者との結び付きが指摘され、癒着が問題になっています。

 耐震偽装マンションの建築主と政治家との関係も表面化しています。自民党の伊藤公介衆院議員・元国土庁長官は、ヒューザーや東日本住宅の社長を国土交通省に紹介。公明党の山口那津男参院議員秘書の名前もでてきています。伊藤元長官はヒューザーに百万円、東日本住宅に六十万円のパーティー券を購入してもらい、小嶋社長から計四十八万円の個人献金を受けています。

 こうした政界との関係も今後の真相解明のひとつのポイントです。

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