2005年11月28日(月)「しんぶん赤旗」

主張

米産牛肉輸入問題

“検査抜き”流通していいか


 小泉内閣が、米国の圧力に屈して、BSE(牛海綿状脳症)の検査をしていない牛肉・内臓を年内にも輸入しようとねらっています。

 日本では、二〇〇一年九月、BSE感染牛が初めて発見されたのを受けて、翌月から食肉処理する牛はすべてBSE検査を行っています。この全頭検査によって、十五頭の感染牛を発見し、食物連鎖から排除しています。日本で牛肉が安心して食べられるようになったのは、全頭検査など、BSE対策を強化してきたからです。

■安全の評価を避ける

 米国産牛肉の輸入が再開されれば、検査抜きの牛肉・内臓が流通することになり、日本の食の安全は、大きく後退します。

 米政府は、二〇〇三年十二月に米国内でBSE感染牛が発見され、今年六月に二頭目が確認されたにもかかわらず、「アメリカの牛肉は安全だ」と言い続けています。

 今月中旬に来日したブッシュ大統領も、「日本の(食品安全委員会プリオン)専門調査会が、米国の牛肉は安全との判定を出してくれた」と発言しています。

 しかし、米国産牛肉の安全性を評価したプリオン専門調査会の答申案は「評価することは困難と言わざるを得ない」と明記し、安全の判定を避けました。

 米国では、食肉処理する牛の1%未満しかBSE検査をせず、飼料規制も不十分です。脳や脊髄(せきずい)など病原体が蓄積する特定危険部位の除去も完全ではありません。月齢を特定する個体識別の制度もありません。そんな米国産牛肉を安全と判定できないのは当たり前です。

 同時に、答申案は、「他方、リスク管理機関から提示された輸出プログラム(全頭からの危険部位の除去、二十カ月齢以下の牛等)が順守されるものと仮定した上」で、日米の「リスクの差は非常に小さいと考えられる」と明記しました。政府は、全国各地で答申案をもとに国民との意見交換会を開きましたが、配布された資料は、この「他方」以下に下線が引かれ、「安全」と印象づけるかっこうになっています。

 しかし、答申案が、「順守されるものと仮定した上で」としたのは、全頭からの危険部位の除去、二十カ月齢以下の牛等という前提への担保がないからです。もし、これらの条件が守られるという確証が、専門調査会にあるなら、わざわざ「仮定した上で」と明記する必要もありません。

 答申案をねじまげて、輸入再開へと踏み出すなら、専門家の意見をも無視することになります。

 日米両政府は、輸入再開にむけて、二十カ月齢以下の牛肉という条件を正当化するために、まず、日本国内のBSE検査を全頭から二十カ月齢以上に規制緩和しました。二十カ月齢以下の牛なら、日米とも、BSE検査をしていないことになり、“同等性”を主張するのも無理がないと踏んだのです。

■米国業界の利益優先

 日米両政府は、今年七月には全頭検査の緩和にこぎつけました。しかし、国民世論が実行を許さず、全都道府県が、全頭検査を自主的に行い、国も従来通りの補助金を出しています。

 米政府は、業界の負担がふえるからといって、全頭検査を拒否しています。国内の業界のコストを優先させて、日本に規制緩和を求めているのです。米国業界の利益のために、日本の食の安全をないがしろにすることは許されません。


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