2005年11月22日(火)「しんぶん赤旗」

コスト削減迫る業界

耐震偽造事件

ぎりぎり設計 甘い民間検査

建設労働者が背景論議


 「建築確認を民間にゆだねて審査のスピードをあげた」「建設業界も最優先でコスト削減をせまってくる」――。静岡県熱海市で二十日、二十一日の両日開かれた第十二回建設研究・交流集会で、マンションの構造計算偽造事件が論議され、ゼネコン労働者や国、自治体の建設現場に従事している参加者が事件の背景について活発に意見をかわしました。


 「今回の事件はとんでもないこと」と発言したのは、ある大手ゼネコンで構造設計に携わっている技術者。「構造計算をやる技術者はコスト削減をいわれ、苦労する。『鉄筋、鉄骨が多い』といわれ、コスト削減のために設計をやり直す。ぎりぎりの設計を要求される」とのべました。

 この技術者は「安全を確保する使命があり、葛藤(かっとう)しながら仕事している」として、次のようにいいました。

 「構造計算はそれを専門にやっている技術者が見れば偽造や過ちはすぐ発見できるはずだ。それを見過ごすことは通常考えられない。建築確認を行政ではなく、民間検査機関がするということで甘さが出たのではないか」

 「マンション建設ラッシュのとき、建築確認をいかに早くとるかということが工期に影響し、コストにも反映した」と発言したのは、別の元ゼネコン労働者。「一九九八年の建築基準法改悪で建築確認の民間開放が行われたが、その目的は明らかに確認のスピードをあげることにあった。今回の事件の背景には建設業界全体がコスト削減を迫られ、工期を早めることが最優先されているということがある」と指摘しました。

 二日間の論議もふまえ、採択した「集会アピール」は次のように訴えました。

 「(事件の)背景には、公共性を守る公務を民間開放した政策、コスト競争を最優先した小泉政権の財政、行政政策があります。これらが不正書類審査を黙認するような体質を生み、購入者、入居者の財産権、居住権を侵害しました。私たちは不正を生んだ諸問題を解明し、建設業における公共性、労働の充実を実現し、建設産業の再生を果たさなければなりません」


■「入居から2カ月…」

■倒壊の危険 住民ら怒りと不安

 「これからどうしたらいいのか」「誰に訴えたらいいのか」――。国土交通省が二十一日、倒壊する危険があると新たに発表したマンションの住民らは怒りや不安を口にしました。

 東京都港区芝大門の「STAGE大門」(芝大門2丁目マンション、地上九階建て、八戸)は、二階以上の各フロアに一部屋しかないペンシルビル。周囲には二階建てや三階建ての町工場や問屋が並んでいます。

 九月に入居したばかりの女性は「崩壊の危険性は報道の人から聞いただけで、行政や販売会社や施工会社からは何の連絡もない」と憤慨。「これからどうしたらいいか、本当に分からない」と不安をあらわにしました。

 八月に入居が始まったばかりの中央区新川の「グランドステージ茅場町」(同八丁堀、地上十三階地下一階、三十七戸)。八階に住む主婦(36)は「区役所から電話があってショックを受けている。一連の報道を見て、もしかしたらと思っていた。六千万円で買ったのに…」と話します。

 震度5弱の揺れに耐えられないとされた千葉県船橋市の建設中のマンション「グランドステージ船橋海神」の近くに住む主婦宮地綾さん(28)は「崩れたら、確実にわが家も巻き込まれる。早く対処してほしい」と心配そうに話す一方、「人が住む前に分かっただけでも良かった」とつぶやきました。

 近所の会社役員の男性(75)は「急ピッチで建物ができていくので驚いていた。今後、補強工事をすると言われても信じることができない。もう撤去しかない」と強い口調で話しました。


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