2005年11月22日(火)「しんぶん赤旗」

自然との付き合い方を交流

登山者ら400人集会 労山


 「登山者と自然との付き合い方を考えよう」と、日本勤労者山岳連盟(労山)が第13回全国登山者自然保護集会を19、20の両日にわたって愛知県瀬戸市の県労働者研修センターで開きました。全国から約400人の会員が集まり、登山者と自然との新しい関係づくりを示す「労山自然保護憲章」制定に向けて意見を交わしました。

 集会では憲章制定委員会の鈴木貫太座長が「いま、オーバーユースや地球環境問題など昔にはなかった課題が現れ、登山者としてどう考えるのか認識を統一する必要性が出てきた」と憲章づくりのきっかけを説明。人気のある山を通り過ぎるだけの登り方では自然を守る力にならないとして、「身近な地域の山に愛着を持ち、自らの登山スタイルをつくっていくことで、登山の文化的な価値を継承することになる」と訴えました。

 討論では各地で積み重ねてきた自然保護運動に根ざした意見が相次ぎました。山岳環境の整備では、「湿原の荒廃対策で木道設置から、迂回(うかい)ルートにさせた」(長野・苗場山)などの取り組みが報告されました。身近な山を守る運動では「鈴鹿でササ枯れ調査をしているが、これ以上進むと土砂の流出もある。行政とのかかわりが欠かせない」との指摘もありました。

 労山の後藤功一・自然保護委員長は「『憲章を単なる紙切れにしない仕事が大事』という発言もあり、登山者として何ができるか考えていこうという熱意を感じた」と集会を振り返りました。同憲章は来年2月の総会で制定される予定です。


■労山自然保護憲章案(抜粋)

 労山は創立以来、登山者の使命として自然保護問題に正面から取り組み、各地で自然を破壊し登山を阻害する開発に反対してきました。また、「山からゴミを一掃しよう」と取り組んだクリーンハイク運動は、登山者のモラルを高め、世論を動かしました。

 いまや、オーバーユース等の利用者自身による問題や、地球温暖化、酸性雨・霧、など地域・国境を越えた地球規模の環境問題も重視されるようになり、自然を汚染・破壊する原因は多様・複雑になってきました。

 私たちは、登山文化の継承発展と、山岳自然と登山者との新しい共存をめざし、「労山自然保護憲章」を定めます。

 ▽登山活動を通して、自然を見る目を養い、自然の変化をとらえ、山と地球規模の環境保全に寄与します。

 ▽山岳での開発動向に関心を持ち、利便性にかたよった情報に惑わされることなく、事実にもとづいた判断で自然がそこなわれないように努めます。

 ▽自分の好きな山「心のふるさとの山」を持ち、地域との交流や文化に触れるなど、自らの登山スタイルをめざします。

 ▽山を汚さず、山をいためず、傷つけた山を復元する努力は登山者の務めです。環境への影響を最小限にするため、「自然を傷つけない登山技術」を求め普及していきます。

 ▽登山道、山小屋など施設整備は、自然への負担を最小限にとどめることが大切です。それらの設置・運営にあたっては、住民や所有者、登山者の合意形成を求めていきます。

 ▽山を汚染させない排せつ物の処理方法を考え、山小屋やトイレの位置を含め山域にあった対策の実現をめざします。


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