2005年11月21日(月)「しんぶん赤旗」

「アジア軽視」「米偏向」 反発広がる

孤立まざまざ小泉外交 APEC

靖国参拝 険悪ムードに米も懸念


 【釜山=中村圭吾、面川誠】十月の小泉首相の靖国神社参拝以来、初めての外国訪問となった韓国釜山でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)。二十一カ国・地域の首脳が参加したこの会議で、アジア一の経済大国であるはずの日本はまったく存在感を示せず、孤立が浮き彫りになりました。


 「袋叩(だた)きにあった小泉」。韓国の朝鮮日報(インターネット版)は二十日、刺激的な見出しで首脳会議の閉幕を報じ、小泉首相のAPEC外交が靖国問題で大失敗に終わったと論じました。

 釜山日報も「新蜜月の韓中が日本バッシング」と題する記事を掲載、「韓中の『全面的協力パートナーシップ』発展の半面、アジア軽視の日本は両国から袋叩きにあった」としています。

 首相が十六日の日米首脳会談で「日米関係が良ければ、アジア諸国ともよい関係を築ける」と語ったことも反発を受けています。京郷新聞は社説で「小泉首相の『アジア軽視』と過度の米国偏向外交は、隣国の反発と危機意識を招き、アジアの平和秩序を脅かしうる」と批判、「日本の孤立は米国との同盟強化では決して解決できない」と強調しました。

 靖国と日本の歴史認識の問題がアジアだけでなく米英を含む国際的な不信を招いていることも印象づけられました。首相の記者会見で質問にたった英BBC放送の記者は、靖国神社の戦争博物館である遊就館では過去の戦争を「防衛のためとして正当化する見解を流している」と指摘。首相の参拝は日本の姿勢を疑わせると質問しました。

 首相は「その(遊就館の)見解を支持しない」と答えましたが、日本をめぐる険悪なムードの広がりを米国も懸念。ブッシュ大統領に同行しているヒル国務次官補は十九日、「歴史問題をめぐる日中対立は米国の利益を損ないかねない」とけん制しました。

 欧米のメディアも小泉外交の孤立を一斉に報道。「近隣諸国は小泉首相在任中の関係改善の望みはないと考え始めている」「日本は靖国参拝で高いツケを払っている」(AFP通信)と報じています。

 APECでは活発な首脳外交が行われたなか、小泉首相が会談した首脳は、議長国の韓国を含め、チリ、カナダの三カ国だけ。中国には外相会談すら拒絶されました。

 その大きな原因となった靖国問題は、外国人記者の日本に対するほぼ唯一の関心事でした。外国人記者向けの日本政府の説明では、経済協力や鳥インフルエンザ対策など日本側が用意した資料や発表が見向きもされず、靖国問題に質問が集中しました。

 「一つの意見の違いとか対立で、全体の友好関係を阻害してはならない。中国、韓国と首脳交流は途絶えているが、他の関係は良好だ。どんなに批判しても結構だ」。十八日の首脳会合で、小泉首相は議題の経済問題を外れ、突然、日中関係に言及、開き直りともとれる発言をして火に油を注ぐ結果となりました。

 中国外務省の孔泉報道局長はすかさず、「困難な状況が生じた根本的な原因は、日本の指導者が意地を張って靖国神社を参拝したことにある」と反論しました。


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