2005年11月12日(土)「しんぶん赤旗」

米の侵略に一役

イラク副首相をまた厚遇

議会・メディアが米政府批判


 【ワシントン=鎌塚由美】米中央情報局(CIA)と結びついてブッシュ米政権のイラク侵略に一役買った元亡命イラク人、アハメド・チャラビ・イラク国民会議代表が、イラクの副首相として九日から訪米しています。ライス国務長官が同日会談したほか、チェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官ら政権首脳が次々と会談を予定する厚遇ぶりに、議会やメディアから疑問の声が上がっています。

 ヨルダンで犯罪者として追及されていたチャラビ氏は米政権にとりいり、フセイン政権が大量破壊兵器を保有しているとのニセ情報を提供しイラク侵攻をあおりました。このため、侵攻後、ブッシュ政権は一時は距離をおいていました。チャラビ氏をふたたび厚遇している背景に関して、十二月十五日のイラク総選挙での正式政権発足をにらんだ動きとの見方が出ています。

 チャラビ氏は九日、ネオコン(新保守主義者)の牙城といわれるシンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)で講演。「イラクで亡くなった米国人の死を残念に思う。私が故意に米政権をミスリードしたかどうかは現代の神話だ」と語りました。

 十日付ニューヨーク・タイムズ紙社説は、「チャラビ氏は単なる政治的日和見主義者というだけでない。彼は他のどのイラク人よりも、イラク侵攻でブッシュ政権に悲惨な間違いをするよう仕向けた責任がある」と述べました。

 同紙は、チャラビ氏が、イラク戦争前には「好戦的な国防総省やホワイトハウスの高官にとって聞きたいことを聞かせてくれるお気に入り」だったと指摘。今回のブッシュ政権の厚遇について、「ブッシュ政権がいまだに、チャラビ氏の話の聞き手として政府高官をあてがおうとしているのは憂慮すべきだ」と批判しました。

 米議会では、上院司法委員会の三人の民主党議員がゴンザレス司法長官に書簡を送り、米機密情報をイランに漏らしたとの疑惑がかけられているチャラビ氏を米連邦捜査局(FBI)は尋問すべきだと要請。十八人の下院議員は、対イラク開戦前にチャラビ氏が提供したフセイン政権の大量破壊兵器保有情報に関し同氏に面会を求めました。

 九日にチャラビ氏と会談したハドリー大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は十日の記者会見で、「(イラク開戦前の情報収集について)間違った情報を流した中心人物だと政府が考えるチャラビ氏を、政府高官がなぜ歓迎するのか」と追及されました。同氏は、「彼はイラクの副首相であり、イラク政府を代表して訪問している」からだとかわしました。


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