2005年11月12日(土)「しんぶん赤旗」

これでも増税に走るのか

7−9月期GDP

大企業の大もうけ家計に回らず


 二〇〇五年七―九月期の国内総生産(GDP)が四期連続のプラス成長となったことを受け、小泉政権は「(日本経済は)緩やかな回復を続けている」(谷垣禎一財務相)として、大増税路線にひた走ろうとしています。日本経済の先行きは楽観できるのか。大増税は何をもたらすのでしょうか。(山田英明)


■消費支出は減少

 七―九月期のGDP速報をみると、日本経済はけっして楽観できる状況にはありません。物価変動の影響を除いた実質で前期比プラス0・4%。より実感に近い名目で同プラス0・2%の伸びです。伸び幅は一―三月期、四―六月期に比べて縮小傾向を続けています。

 GDPの約六割を占める個人消費が依然として低迷しているからです。総務省の七―九月期の家計調査によると、勤労者世帯の消費支出は、前年と比べて名目2・1%減(実質1・7%減)でした。前期比も実質3%減です。

 家計の実収入が減少するもとで、家賃や保険医療サービスなどいや応なしに必要となる支出が増える一方で、教養娯楽などの選択的な支出を減らしているのが家計の実態です。

図

■中小企業も低迷

 一方、一部大企業は、史上空前の利益を記録し続けています。

 財務省が九月五日に発表した〇四年度の法人企業統計によると、企業の経常利益は三年連続で増え、約四十四兆七千億円。バブル期の一九八九年度(三十九兆円)さえ上回る空前の利益です。

 中でも、資本金十億円以上の大企業が、約二十五兆八千億円と全体の約六割を占めています。

 ところが、大企業の高収益が、日本経済を支える中小企業全体を押し上げる効果を発揮していません。

 九月の日銀短観によると中小企業の業況判断は依然低迷。特に、非製造業では「悪い」が上回っています。中小企業の〇五年下期の設備投資計画はマイナスです。個人消費が低迷するもとで、日本の企業数の99%を占める中小企業の景況感が落ち込み、設備投資を鈍化させています。七―九月期GDP統計でも民間設備投資は、四―六月期の名目3・5%増(実質3・4%増)から同0・4%増(同0.7%増)に落ち込みました。

■給与に反映せず

 好調な企業業績は、労働者の給与にも反映されていません。GDP統計の雇用者報酬は四年連続で減少。七―九月期も微増にとどまっています。民間企業に勤める人が〇四年一年間に受け取った平均給与は前年より五万一千円も減少しました。平均給与は七年連続で悪化し続けています。

 さらに中小非製造業や個人企業等の就業者は、日本の労働力人口全体の69・5%を占めます。中小企業の経営難が、個人消費の鈍化にも響いています。

表

■97年の轍踏むな

 「景気が緩やかに回復していることを裏付ける結果だ」とGDP速報を評価する与謝野馨経済財政担当相は、「(定率減税全廃は)踊り場を脱するところまできている日本経済に決定的な打撃を与えるような税制改正ではない」(二日)と大増税路線に舵(かじ)を切ろうとしています。

 小泉政権のもと、〇六年度税制「改正」で所得税・住民税の定率減税の全廃を決め、〇七年の通常国会に消費税率引き上げ法案を提出しようとする増税スケジュールが浮上しています。社会保障改悪を中心とした歳出削減とセットの計画です。

 「景気がようやく上向きかけようとした段階で、消費税や社会保険料の引き上げなどにより国民に負担増を求めた一九九七年と同じ轍(てつ)を踏んではならない」(日本商工会議所の〇六年度税制「改正」に関する要望)。小泉政権の姿勢が問われます。


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