2005年11月9日(水)「しんぶん赤旗」

主張

ハンセン病裁判控訴

解決の引き延ばしに抗議する


 日本が戦前の植民地時代に開設した韓国と台湾のハンセン病療養所の元患者が、日本国内と同じ補償を求めていた二つの訴訟で、日本政府は、国が敗訴した台湾訴訟について、東京高裁に控訴しました。

■原告の願い踏みにじる

 原告たちは、八十歳代、九十歳代の高齢者です。既に補償を請求してからの二年足らずの間に、少なくない方々が無念のうちに亡くなっています。国の控訴は、生きて解決を得たいという原告の悲痛な願いを踏みにじるものであり、心の底から抗議します。

 二つの訴訟は、「ハンセン病補償法」(二〇〇一年六月制定)の対象に、戦前の、国外のハンセン病療養所である「小鹿島更生園」(韓国)、および「楽生院」(台湾)に入所していた人々が、含まれるかどうかをめぐって、争われました。

 台湾訴訟の東京地裁判決は、補償法が“広く網羅的な救済”を目的にして、日本の施政権外にあった時期の沖縄の施設や私立の療養所入所者も補償の対象としている立法趣旨に着目して、原告の訴えを認めました。平等原則の立場にたった当然の判断です。

 政府は、控訴を断念したうえで、平等原則の立場にたった早期の救済措置をとるべきでした。

 政府は、韓国訴訟の東京地裁判決で原告の請求が退けられ、台湾訴訟とは違う司法の判断があったことを、控訴の理由にあげています。しかし、韓国訴訟の判決も、補償対象を国内外で区別することについて、「ハンセン病補償法の規定や趣旨、目的に基づく解釈といった観点からは、断定的な結論を出すことは困難であるというほかはない」とのべています。ハンセン病補償法は、その対象として国内外で区別をしていないというべきであり、韓国、台湾の療養所の入所者を補償の対象から除外しているわけではありません。「現行の補償法は、国外の療養所の元入所者を対象としたものではない」とする国の言い分は、見当違いです。

 戦前の韓国、台湾のハンセン病隔離政策の被害者に、日本国内と同じ平等な補償を行うことは、政府の責任でできる。これが司法の共通した判断です。

 韓国の原告が請求を棄却されたことをもって、台湾訴訟の国の控訴を正当化することはできません。

 一方で、政府は、「控訴とは別に、補償については速やかに検討する」とのべ、国外の療養所の元入所者に対する補償方針を打ち出さざるを得ませんでした。これは、原告を先頭にしたたたかいがあったからです。

 国会でも、二〇〇一年五月、日本共産党の瀬古由起子衆院議員(当時)が、国外の療養所入所者への調査、謝罪、補償を求める質問を行っています。政府は、検証後の今後の検討課題としました。

 その後、厚生労働省が設置した検証会議は、今年三月に最終報告書をまとめました。報告書は、“一九〇七(明治四十)年、旧らい予防法を公布し、国家がハンセン病患者の隔離に踏み切った”としています。韓国、台湾のハンセン病対策は、日本国内の絶対隔離政策の一環であり、日本国内の患者と同じかそれ以上の過酷な被害を受けていました。

■平等な補償をただちに

 政府が、戦前の植民地支配下の強制隔離による被害と補償について、目をつぶることはできません。韓国、台湾をはじめとする国外の療養所入所者に、日本国内と平等な補償をただちに行うべきです。


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