2005年11月8日(火)「しんぶん赤旗」

石原産業の埋め戻し材

やっぱり産廃だった


 埋め戻し材「フェロシルト」をめぐる問題で、三重県は五日、廃棄物処理法違反の疑いで化学メーカー「石原産業」(大阪市)と同社関係者を三重県警に告発しました。問題の背景をみました。


 石原産業は、フェロシルトを販売する際に、「用途開発費」「改質加工費」などの名目で、中間業者に一トン当たり三千五百円前後を支払っていました。三重、愛知、岐阜の三県が十月二十四日に明らかにした事実です。

 同社が業者に支払った額は、二〇〇一年八月の販売開始時から、総額で二十五億円以上に上るといいます。同社の中間業者へのフェロシルトの売り値は、トン当たり百五十円。支払いは、売り値をはるかに上回っていたわけです。

 フェロシルトは、酸化チタンの製造過程で出るチタン鉱石廃棄物を「粘土質状」に加工したもので、主成分は酸化鉄と石こうです。二〇〇三年、三重県がリサイクル推奨品に認定しました。

 チタン鉱石精錬後の廃液は、ヒ素やカドミウムなどの有害物質や放射性物質を含むため、従来は、産廃汚泥として管理型処分場で処理されました。産廃としての処理費用はトン当たり九千四百円(三重県産廃税千円を含む)かかります。ですから、リサイクル製品として、トン当たり三千五百円支払っても、その方が安上がりということなのです。

■廃液入れながら県に別サンプル

 このフェロシルトが、愛知県瀬戸市、岐阜県土岐市・瑞浪市稲津町、可児市大森をはじめ各地で、野積みや、不法投棄、違法処理されました。自治体や住民等の強い抗議と追及を受け、ついに、石原産業は、「逆有償」だったことを認めました。

 住民団体、愛知、岐阜県や、日本共産党が指摘していたように、埋め戻し材などのリサイクル製品ではなく、産廃そのものだったのです。

 さらに同社は、自社の農薬工場の廃液などをフェロシルトに混入させ、三重、岐阜県には、別のサンプルを提出するという、とんでもない反社会的行為を行っていたことも認めました。

 不祥事謝罪の記者会見のあと、安藤正義常務が、十月十五日、党事務所を訪れ、この問題を一貫して追及してきた日本共産党の萩原量吉三重県委員会副委員長・前県議にも謝罪しましたが、石原産業のやったことは、絶対に許されないことです。

 今後、同社は、自らの責任で直ちに不法投棄されたフェロシルトを撤去し、原状回復すべきです。国や県は、企業に責任を果たさせるよう、厳しい対応が求められます。

■産廃の不法投棄法制化で根絶を

 香川県豊島の大規模な産廃不法投棄事件では、業者が、「廃棄物ではない。リサイクルのための資源だ」と主張。国、県も、それを認めたために対応が遅れ、深刻な事態に発展したという苦い経験をしました。しかし、その後も、廃掃法上の「資源」か「ごみ」かの定義が明確にされていないために、全国各地で、同じような事件が後を絶ちません。

 企業にとっては、廃棄物をまともに処理すれば、高い処理料を支払わなければなりませんが、不法投棄にまわしてしまえば、コストは当然安くつきます。日本の企業は、長い間、このような無責任なやり方をとり続け、国をはじめ行政は、それをずっと放置し続けてきました。いま、「資源」という名目で、廃棄物が違法、不法に処理されることを、未然に防いでいくことが、産廃行政に緊急に問われています。

 そもそも、フェロシルトのように放射性物質や、有害な重金属類を含むものを、リサイクル製品として認めることが問題なのです。もともと有害物質に汚染されている廃棄物のリサイクルについては、製品の品質に細心の注意が払われなければならないはずです。しかし、現実に、それだけの対応が取れるのかというと、実際には、採算上、不可能に近いといわなければならないでしょう。ですから、現状では、有害物質を含んだ廃棄物の資源化は、原則禁止にすべきなのです。

 国は、最高裁が出した判決(九九年)をきっかけに、翌年にはじめて、廃棄物に関し、「(廃棄物に)該当するか否かは、その物の性状、取引価格の有無、占有者の意思等を総合的に判断する」、との判断基準を、厚生省通知で示しました。しかし、その後も、資源と偽った産廃の不法投棄は後を絶ちませんでした。

 今年の七月二十五日、環境省は、「建設汚泥処理物の廃棄物該当性の判断指針」(通知)を出し、より現実に即した判断基準を示しました。通知では、排出の状況について、物の性状、排出の状況、通常の扱い形態、取引価値の有無、占有者の意思等の各基準、「自ら利用」等について、より詳細に明記しています。

 今後、この通知を、自治体や住民が、積極的に活用していく必要があります。同時に、不法投棄は、社会的に許されない重大な犯罪なのだということをはっきりさせていくために、どうしても、法律できちんと規制していく必要があります。

 企業は、(1)処理能力以上の生産をしない(2)循環型で、「拡大生産者責任」の立場に立って、廃棄物(ごみ)を出さない製造、流通を考える(3)有害物質は生産段階で使わない――という姿勢に転換すべきです。そうでなければ、人間活動による地球規模の環境破壊や、資源の浪費による資源の枯渇を防ぐことはできません。企業の社会的責任を問い、ルールをまもらせていくとりくみが、いま、ますます重要になっているといえます。 市民・住民運動局長岩佐恵美


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