2005年11月6日(日)「しんぶん赤旗」

仏暴動

非難の一方で

背景に失業・貧困・差別


 【パリ=浅田信幸】「インティファーダ(民衆蜂起)」「都市ゲリラ」―さまざまに形容される若者たちによる「暴動」は、パリ郊外からフランス中東部のディジョンなど地方にも広がる様相です。

 学校の秋休み(二週間)は三日に終了。少し落ち着くと予想する向きもありましたが、三日夜から四日未明にかけパリ郊外で最大級といわれるルノーの自動車販売店やバス車庫が燃やされ、被害額では最大となりました。通行中のバスが燃やされて、障害者の女性が重傷を負う事態も生まれています。

■移民が多い地域

 きっかけは先月二十七日、パリの東にある町(セーヌサンドニ県)で北アフリカ出身の三人の若者が警官に追われて逃げ込んだ変電施設で感電し、二人が死亡、一人が重傷を負った事件です。同夜、数十人の若者が消防士や警察官に投石し、車に火をつけるなどして騒ぎ、暴動へと拡大しました。

 これを力ずくで抑えこもうとするサルコジ内相の「社会のくず」発言や三十日の衝突で機動隊の撃った催涙弾が、故意か偶然か、モスク(イスラム教の礼拝所)に転がり込んだことも火に油を注ぎました。その後、暴動は感電死事故のあった町から近隣の市や県へと飛び火しました。

 パリの北から東に広がる地域は移民が多い。失業率は全国平均より高く、40%に達する区域もあるといいます。

 ニース大学のジャンフランソワ・マッテイ哲学教授は仏紙への寄稿で、暴動の背景について、「若者であることが、ある者にとっては非行に走らせることになる地域、より多くの者にとっては学校で強まる差別や、余暇を楽しむことが難しい現実があり、さらに警察も恐怖にかられてなおさら手荒く行動し、しばしば人種差別的な力ずくの取り締まりをする、そういうことを経験する地域」に問題があると指摘。「(暴動は)不正義と、自分が侮辱されているという深い感情、憤激、怒りを表現している」とも述べています。

 “怒りと絶望にかられた若者たちの行動”だというのは、多くのメディアや識者の見方です。暴力は許せないとしつつも、同情的な論調が多いようです。リベラシオン紙は「許せないものではあるにしても、彼らの暴力は部分的には、貧しさと排除、不正義、悲惨の表現にほかならない」と書いています。

■政府が行動計画

 暴動は、貧困、移民、治安の悪さといったフランス「国内の第三世界問題」を浮かび上がらせました。

 大都市郊外の問題は「治安重視市街区域」(ZUS)として以前から対策がとられてこなかったわけではありませんが、マッテイ教授は「一九七〇年代の終わりの時期。この最初の『暑い夏』(パリなど大都市郊外で起きた暴動事件)以来、何も解決されていない」と警告を発しています。

 仏政府は、事態を重視し、収拾に全力をあげることになりました。また大都市郊外の問題を抱えた地域の環境や住民生活の改善をめざす「行動計画」を今月中にまとめ上げることも明らかにしています。


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