2005年11月4日(金)「しんぶん赤旗」

湾岸戦争症候群と認定

英裁判所

元兵士に障害年金支給


 【ロンドン=岡崎衆史】一九九一年の湾岸戦争に従軍した兵士が身体的・精神的な障害を訴えている「湾岸戦争症候群」をめぐって、英国の裁判所がこのほど、元兵士一人が同症候群を患っていると認定し、障害年金の支給を命ずる裁定を出しました。

 英国防省はこれまで、医学的根拠がないとして湾岸戦争症候群の存在を否定。今回、同症候群の存在を裁判所が公式に認めたことで、今後さらに多くの認定の可能性が出てきました。

 年金控訴裁判所は十月三十一日、湾岸戦争に従軍後、記憶障害やぜんそく、精神的不安を訴えるダニエル・マーティンさん(35)を湾岸戦争症候群に認定。その上で、湾岸戦争症候群の用語を「適切な医学名」「有益な包括的用語」と指摘するとともに、国防省が同症候群を認めてこなかったことを「非常に遺憾」と批判しました。

 国防省は一日声明を出し、「現状では湾岸戦争症候群を個別の医学的症状と認める適切な医学的基礎がないのは事実だ」としながらも、「それは、元兵士があらゆる障害補償を受けるのを妨げるわけではない」と表明しました。

 英国の湾岸戦争退役軍人の団体によると、障害年金を申請した七千五百人のうち、千五百人が湾岸戦争症候群を訴えています。

 今年初めには、独立調査委員会が湾岸戦争症候群の存在を認め、最大六千人の元兵士に対して補償交渉を進めるよう国防省に促していました。

 湾岸戦争症候群の原因については、対生物・化学兵器用のワクチンの摂取や、米軍が使用した劣化ウラン弾の放射性粒子の吸入などが、専門家によって指摘されています。


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