2005年11月1日(火)「しんぶん赤旗」

障害者「自立支援」法成立

「応益」に抗議広がる

“福祉の心”を捨てた負担増


 障害者「自立支援」法は、かつて国会が経験したことのない障害者の注目、不安の声、抗議の行動につつまれるなか三十一日の衆院本会議で成立しました。法案は二月に閣議決定され厚労省が当初六月中の成立を見込んだものの、審議未了・廃案、今国会への再提出という異例の経過をたどったのは、「応益負担」という障害者福祉の根本をこわす改悪がもりこまれたためです。


 現行の障害者福祉は、契約にもとづき障害者みずからサービスを選択できる仕組みとして支援費制度が二〇〇三年度にスタートしたばかりです。それが二年連続の予算不足という失政で破たん。介護保険との統合で安定財源を確保するという方針転換を契機に「応益負担」の方向が打ち出されることになりました。

■必要な人に重く

 介護保険との統合は先送りとなりましたが、現行ではバラバラの身体・知的・精神のサービス提供の仕組みを一本化したうえ、医療や就労支援の仕組みも合体させるという「改革」を理由に、「応益負担」は法案にもりこまれました。

 「応益負担」は、利用したサービスに応じて自己負担を高くしていくもので、法案は一割負担としました。利用するサービスは障害者が生きていくうえで不可欠なもの、社会参加や自立という障害者が人間らしく暮らしていくうえで無くてはならないもの、こうした福祉の心はそもそも考慮されない仕組みです。障害が重くなるほど、サービスを必要とする人ほど重い負担を押しつけます。

 収入に応じた「応能負担」にもとづく支援費制度の負担額に比べても、十倍をはるかに超える負担例が生まれます。メール、ファクスや議員への面会などで国会に殺到した障害者の声により、与党議員も質問のたびに「負担増の不安」に触れざるをえない状況になりました。厚労省側は答弁で、与党は質問で「きめ細かい配慮」を乱発して軽減の追加策を示したものの、作業所の工賃を上回る利用料負担など、障害者の生きる意欲さえ奪う負担増を真に是正するものではありません。

 それでも尾辻秀久前厚労相が「かぎりなく応能負担に近づけた」とのべたことは、「応益負担」の害悪を提案者みずから裏書きしたともいえます。“福祉は買うもの”と強弁した局長も日本共産党の笠井亮衆院議員の追及で答弁を取り消しました。

 厚労省は「支援法」により、今後、障害者福祉給付費の国負担を義務的経費(手話通訳などを除く)とすることで財源が安定的に確保され、裁量的経費だった支援費制度のような予算不足は起こらないとしています。しかし義務的経費にしても今後のサービス利用増に見合う予算が確保される保障はありません。

■給付水準を抑制

 小泉内閣は社会保障の給付抑制をすすめ、来年度は医療分野で大幅抑制をめざしています。消費税増税路線とも一体の歳出抑制策が強まるもとで、障害者福祉の給付増と「小泉改革」との矛盾は激化せざるをえません。笠井議員が十月二十八日の質問で示した厚労省の内部文書は、規制緩和などで利用者増をはかる一方で「一人当たり給付水準は抑制」するとの検討方向を明記。いま利用しているサービスが従来どおり維持されるかも不明であり、障害者の運動がより重要となっています。(斉藤亜津紫)


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