2005年10月26日(水)「しんぶん赤旗」

旧植民地ハンセン病補償2訴訟

台湾は支給 韓国は棄却

東京地裁


 日本の旧植民地統治下の韓国(小鹿島・ソロクト更生園)と台湾(楽生院)のハンセン病元患者計百四十二人が「ハンセン病補償法」に基づく補償請求を認めなかったのは違法として日本政府に処分の取り消しを求めた訴訟の判決が二十五日、東京地裁でありました。立法趣旨のとらえ方の違いで、「韓国訴訟」(原告敗訴)と「台湾訴訟」(原告勝訴)で異なった判断が出されました。

 「台湾訴訟」の菅野博之裁判長は、「補償法は国籍や居住地による制限はない」と断言し、「(台湾の施設の)入所者を補償の対象から除外することは、平等扱いの原則」に反するとして原告側の請求を認めて、支給しなかった処分を取り消しました。

 一方、「韓国訴訟」の鶴岡稔彦裁判長は、国内療養所と韓国や台湾などの外地療養所の「区別を予定した明確な規定はない」としながら、「補償金の支給請求を認めなかった決定は適法」として、原告の請求を棄却しました。

 勝訴判決をだした菅野裁判長は「補償法は、広く網羅的にハンセン病の救護・療養施設に入所していた者を救済しようとした特別な立法」と強調。立法趣旨について「偏見や差別と隔離政策の中で、多大な苦難を強いられてきたことを真しに受け止める」ことを求め、入所者の「心身の傷跡の回復と今後の生活の平穏」を求めた特別の補償と指摘しています。

 裁判は、旧植民地統治下の国立ハンセン病療養所は「補償法」の対象に入るのかが争点となり、原告は「憲法の定める平等原則に反する」として補償を求めました。

 原告弁護団・原告団は、「韓国訴訟」について控訴し、「台湾訴訟」では国に控訴断念を迫っていく方針です。

■解説

■国は全面解決に踏み出せ

 異なった判断が出た中で、今何が求められているのか―。

 国がやるべきことは明白です。一つは、国は「台湾訴訟」の判決を真摯(しんし)にうけとめて控訴しないことです。韓国、台湾両原告の平均年齢は八十一歳を超えています。「時間は短い。命あるうちに人間の尊厳を回復してほしい」という原告の叫びを聞くべきです。

 もう一つは、二つの判決とも補償法の中に国内療養所と旧植民地の療養所の扱いについて区別をした文言がないという判断を一致しておこなったことに照らして、厚生労働大臣の判断で、旧植民地の元患者も補償対象とすることを宣言することです。

 国は、裁判で長い時間を費やすことなく、加害責任を認めて、すべての被害者を救済するために、ハンセン病問題の早期・全面的解決の道に踏み出すべきです。国会も補償対象に加えるために努力を尽くすべきです。

 動かす力は国民世論にかかっています。(菅野尚夫)


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