2005年10月18日(火)「しんぶん赤旗」

靖国神社

「正しい戦争」論の宣伝センター


 靖国神社は、戦前・戦中、陸軍省・海軍省が管理運営し、国民を戦争に動員する精神的支柱でした。若者たちは「(戦死したら)九段で会おう」を合言葉に戦場に向かい、遺族も「靖国の母」「靖国の遺児」などとたたえられました。

 天皇のために戦死した者だけが合祀(ごうし)の対象で、西郷隆盛など天皇にそむいた「賊軍」や、第二次大戦での空襲・原爆・沖縄戦などによる一般戦没者は含まれていません。

 戦後、二つの重大問題が加わりました。一つは、一九七八年十月に、極東国際軍事裁判で、侵略戦争を準備、計画、遂行した「平和に対する罪」で裁かれた「A級戦犯」を合祀したことです。靖国神社はこの「A級戦犯」を「形ばかりの裁判によって一方的に“戦争犯罪人”という、ぬれぎぬを着せられ、むざんにも生命をたたれた」方々として、「昭和殉難者」と呼んでいます。日本には戦争犯罪などなかったという立場です。

 もう一つは、日本の侵略戦争を「正しい戦争」だったとする歴史観・戦争観を国民に広めることを自らの「使命」にしていることです。

 同神社が編集・発行している軍事博物館「遊就館」の図録(『遊就館図録―靖国神社』)には「表裏一体の二つの大きな使命」として、「英霊顕彰」と「近代史の真実を明らかにする」ことをあげています。「英霊顕彰」とは、戦死した兵士の武勲をたたえること。「近代史の真実」とは、第二次世界大戦が「我国の自存自衛の為、さらに世界史的に視れば、皮膚の色とは関係のない自由で平等な世界を達成するため、避け得なかった戦ひ」だとしています。つまり、「自存自衛」「アジア解放」の「正しい戦争」だったというのです。

 遊就館には、この立場から、日米開戦も米国の“陰謀”であり、日中戦争も中国側の暴虐に問題があったとの説明が展示されています。


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