2005年10月17日(月)「しんぶん赤旗」

主張

「農政改革」

豊作を心から喜べる政策に


 実りの秋ですが、多くの農家は、豊作の喜びも半ばで、むしろ、不安にさらされています。農産物価格の暴落で、生産を続けるかどうかを考えざるを得ない状況があるうえ、政府が「農政改革」の名目で、大部分の農家を政策の対象から排除する新しい「担い手」対策を押しつけようとしているからです。

■米価は30年前に逆戻り

 生産者米価は、昨年来の暴落がとまらず、三十年前の価格水準に逆戻りしています。昨年、米作りで農家が受け取った家族労働報酬(賃金)は、一日当たり平均三千八百六十二円、一時間四百八十二円。高校生のアルバイト以下です。今年はさらに下がっており、これでは米作りを続けること自体が困難になります。

 米価暴落の一つの要因に、今年が豊作基調であることがあげられています。しかし、根本には、政府が米価の下支えを放棄したうえ、一昨年の不作を理由に手持ちの古米を放出して価格を引き下げていることがあります。大手業者の買いたたきも下落に拍車をかけています。

 深刻なのは米作りだけではありません。野菜価格も大暴落し、トラクターで踏みつぶしたりする産地廃棄が繰り返されました。その一方で、今年前半の輸入野菜の量は、前年同時期より42%も増えており、政府の輸入野放しが大きな原因であることはあきらかです。

 このままでは、農村の健全な発展を阻害し、安全な食料の安定供給、国土と環境の保全・保護など、農業の多面的な役割を果たせなくなってしまいます。

 輸入自由化や価格政策の放棄など、国内生産を縮小させ、中小農家を切り捨ててきた農政を、いまこそ、抜本的に見直すべきです。それこそ、国民の期待にこたえる道です。

 ところが小泉内閣は、「農政改革」で、農産物輸入の全面自由化をすすめ、農業の生産と流通を市場まかせにする効率主義をいっそう徹底しようとしています。

 その中心が二〇〇七年から導入する予定の品目横断的経営安定対策です。品目ごとの価格対策を廃止し、価格下落による所得減を経営単位に補てんする制度に切り替え、対象をごく一部に限ります。

 この対策は、「農政改革」のもとで農産物価格がいっそう下落し、農業経営に打撃を与えることを前提にしたものです。農家全体が打撃をうけるのに、政府は、「安定対策」の対象を一部の大規模経営と法人に限定しようとしています。中小農家も、集落型経営に参加すれば対象にすることになっていますが、その場合も二十ヘクタール以上で、将来法人化する見通しがあるなど、厳しい条件があり、多くの地域や農家は排除されます。

 十月中に麦・大豆などを対象にした枠組みを決めることになっていますが、米を含めて農業全体に関連するだけに、重大な意味をもちます。

■地域・農家を大事に

 価格暴落が避けられないのに、大多数の農家と集落営農を政策の対象から排除する小泉農政は、そのひどさにおいて従来の政策と質的に違います。大多数の農家を、大規模生産や低賃金、低地価などを背景に低価格で入ってくる輸入農産物に裸でさらし、日本の農業・食料生産と農家、農村を崩壊させかねません。

 日本共産党は、無謀な「農政改革」をただちに中止し、とめどない輸入拡大をおさえ、価格・所得保障を充実させ、家族経営を支え、自給率向上に本格的にとりくむ農政への転換を強く求めます。


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