2005年10月16日(日)「しんぶん赤旗」

米の「中国脅威論」批判

米誌でマイケル・クレア氏

軍備競争拡大招く


 【ワシントン=山崎伸治】政治学者で米ハンプシャー大学のマイケル・クレア教授は米誌『ネーション』最新号(十月二十四日号)で、ブッシュ米政権が「中国脅威論」をあおって中国に対する軍事的圧力を強めていることを批判し、今年二月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)の「共同宣言」の危険性を改めて指摘しました。

 同氏は、ブッシュ政権の対中政策の「振り子が反中国、戦争準備態勢に向かって振れていることは顕著だ」と指摘。その「三つの兆候」として、ラムズフェルド国防長官が六月四日にシンガポールで行った演説で中国の軍備増強に懸念を表明したこと、七月に公表した国防総省の「中国の軍事力に関する年次報告」がそれを強調したこととともに、2プラス2の「共同宣言」を挙げました。

 クレア論文は「第二次大戦中、日本軍国主義というつらい経験を味わったことや、米国がアジアで構築しようとする反中国同盟に今も懸念を抱いていることを考慮すれば、日米当局がこの時期に安全保障上の結束強化を議論していたという事実そのものが、中国側にとっては非常にやっかいだった」と指摘。「共同宣言」が台湾問題を取り上げたことは中国側にとって「挑発的」だったと述べています。

■保守派の影響が

 ブッシュ政権の対中政策には「永続的な米国の軍事的優位という政策を擁護してきた保守派の影響」があるとして、中国を旧ソ連に代わる「新たなライバル」と位置付けながら、二〇〇一年九月の同時多発テロ事件で「対テロ戦争」に力点が移っていたと解説。

 今になって「反中国」に転換する理由として、米国民が「対テロ戦争」にうんざりし、米軍内にイラク戦争がこう着状態になっているとの認識が広がっていること、さらに「中国の経済拡大が軍事力の増強と受け止められ始めた」ことを挙げています。

■石油をめぐって

 さらに石油をめぐる米中の競争があることを指摘。中国が新たな供給元を世界中に求め、イランやスーダン、ベネズエラとの関係を強化することが米国への脅威になり、今や「国家安全保障」上の問題ととらえられていると分析しています。

 論文は、米国が中国に対抗するため、アジア太平洋地域で「武器の供給や軍事援助、共同演習、軍部間の定期協議、米軍基地の拡大」などの協力を推進していると指摘。その一例として、米太平洋軍が弾道ミサイル防衛システムを日本と共同開発していることを挙げています。

■米中両国に有害

 中国については、「米国に対する軍事的劣勢を認識している」としたうえで、「どの国であれ、仮想敵国の軍備増強に直面すれば脅威に感じ、それに対抗するだろう」と指摘。それに対抗した中国の軍備増強や「上海協力機構」を通じた米側へのけん制が、米軍のいっそうの増強の口実にもなっていると分析し、「こうした状況が続くなら、いっそうの軍備競争の拡大に陥り、それは両国にとって有害な結果しかもたらさない」と批判しています。


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