2005年10月16日(日)「しんぶん赤旗」

空洞化に歯止め

福島県の大型店規制条例

住民と行政、呼応し運動


 「福島県商業まちづくりの推進に関する条例」(商業まちづくり条例)が十三日に県議会で可決、成立しました。店舗面積六千平方メートル以上の大型店出店に対し、県が意見をのべられるなど、都道府県段階では全国で初の画期的な条例です。市街地空洞化に歯止めをかけることにつながるもの。背景などを現地から伝えます。(福島県・佐々木純、経済部・大小島美和子)

 「やった。全会一致だ」―県議会が条例を可決した十三日、関係者に喜びが広がりました。

 「よかった。私たちの運動が役にたったと思う」というのは、伊達町のイオン超大型店出店に反対して六年間たたかっている保原町商工会副会長の阿部謙一郎さん。日本共産党議員控え室を訪れた川手晃副知事も「全会一致で可決されてほっとした。神山(悦子)議員の賛成討論にも感謝しています」――。

 条例の制定の背景には、行政と住民が相呼応した数年来の取り組みがありました。

 一九九九年に安達町と伊達町(東日本最大級の出店規模)のイオングループ出店計画に反対する「大型店出店とまちづくりを考える会」が発足。ここから大型店出店反対の住民運動がはじまりました。さらに周辺各地で商工団体、住民、労働組合、日本共産党議員などで構成される「考える会」が結成され、自治体や県への陳情、署名行動、学習会などを実施してきました。

 その後も、イオン系スーパー・マックスバリュに対し、桑折町では町民の約六割の署名を集めて出店を断念させ、福島市では二十四時間営業の計画を変更させています。

 住民も県条例案に対する意見公募に一千通を超える意見を寄せました。

 各地の日本共産党議員団は、これらに呼応して県議会や市町村議会で早くから大型店問題を取り上げ、条例の制定も求めてきました。

 福島県は、各地の中心市街地の空洞化に歯止めをかけるために一九九八年二月に「中心市街地活性化対策本部」を設置。二〇〇一年には、中心市街地だけでなく「まちづくり」の観点に立った「まちづくり懇談会」を実施しました。

 〇三年七月に「福島県広域まちづくり検討会」は、学識経験者や市長会、町村長会、NPO法人などから委員を選出し、副知事の諮問機関として設置し、同検討会は〇四年、まちづくりの視点から大型店の立地調整をおこなうことを打ち出しました。

 この間、県内の中心市街地では大型店の撤退、老舗デパートの倒産などでさらに空洞化が進行し、今年になって、郊外に二十四時間営業の大型店が二つもオープン。こうしたなかで、県内の商工会からも条例制定を歓迎する声が寄せられました。

 福島県まちづくり条例は、大型店の出店について、県が出店地周辺市町村の意見を聞き、出店地の適否について意見をのべ、出店者に適正な対応がない場合は、勧告などができます。

 政府は、大型店出店に関する法律を二〇〇二年に大店法から大店立地法に転換し、出店に歯止めをかける調整をなくしたうえ、立地法一三条に「需給調整の禁止」を盛り込み、自治体が大型店出店を抑制することを縛ろうとしてきました。

 福島県条例についても、七日に大手スーパーのイオンが、「条例は営業の自由を保障する憲法や大店立地法一三条に違反するのではないか」との趣旨の意見書を県に提出。しかし、県はこれを「まちづくりの観点からの措置であり、商業上の需給調整ではない」(川手晃副知事)とのべ、自治体権限への抑圧をはねのけています。

 大型店出店調整にかかわる条例制定を検討したいという都道府県は広がっており、福島県が条例を実効あるものにするかどうか、今後の動きが注目されています。

 福島県商業まちづくりの推進に関する条例のポイント 規則で定める店舗面積6000平方メートル以上の大型店新設者は、県に出店届けを出し、出店地と必要な場合は隣接・周辺市町村でも説明会を開催しなければならない。  県は隣接・周辺も含む市町村の意見を聞き、知事が設置するまちづくり審議会の意見を聞いたうえで、新設者に意見をのべることができる。新設者が意見を適正に反映しなかったときは、勧告をし、正当な理由なく勧告に従わなかったときは、公表ができる。  施行は06年10月1日から。
もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp