2005年10月9日(日)「しんぶん赤旗」

民主党 前原体制でかじ取りは…


 「改革競争」「提案路線」――総選挙後の国会論戦や参院神奈川補選で、民主党は小泉自公政権に対し、こんな旗印を掲げています。しかし、提案して競う中身をみれば、これまで以上に自民党寄りにかじを切るものばかりです。(坂井希)

■9条2項の削除ふみ込む

 「私の意見は(戦力不保持の憲法)九条二項を削除し、自衛権を明記することだ」

 代表就任会見でこう持論を展開した前原誠司代表。海外での武力行使の歯止めとなってきた九条二項を廃棄する方向で、自民党と足並みをそろえる重大な発言です。そのうえで、「(与党に)受け身にならない対応を」と、党内改憲論議のスピードアップを指示。五日には党憲法調査会の総会を開き、「憲法提言」の作成を討論するなど、自民党が二十八日にも改憲草案をまとめる動きを意識しています。

 この姿勢は国会対応でも露骨にあらわれました。改憲のための国民投票法案の審議を狙った衆院への憲法調査特別委員会の設置に、「議論を逃げるつもりはもともとない」(野田佳彦国対委員長)として自公とともに賛成したのです。

 海上自衛隊のインド洋派兵など米軍の「対テロ」戦争支援を定めたテロ特措法。十一月一日に期限が切れるため、一年延長する改悪案を政府が国会に提出しています。

 民主党はこれまで、同法の成立や延長には「国会の事前承認が盛り込まれていない」として反対してきました。しかし前原代表は四日、「テロ特措法の中身、必要性については当初から賛成していた」「私個人は国会承認が必要条件だとは考えていない」と、賛成の方向で調整に入る考えを示しました。

 「外交・安保の立ち位置は(自民党と)ほぼ一緒でいい」(「東京」九月二十七日付インタビュー)という“前原カラー”が表に出た形です。

■“提案”で小泉暴走あおる

 民主党の“提案型”の論戦は、与党の暴走をけしかけるものになっています。

 政府案の「対案」として国会に提出した「郵政改革法案」の趣旨説明で、民主党の大串博志議員は「小泉総理が述べておられる『官から民へ』、あるいは『民間でできることは民間に』という考え方については異論はありません」(六日、衆院本会議)など、二度も首相に“賛意”を示しました。選挙中、まがりなりにも政府の民営化法案に反対していた立場はどこへやらです。

 実際、郵貯の預入限度額を半分にして経営を弱体化させる点や、簡保を完全に廃止する点では、民主党案はより日米の銀行・生命保険業界の要求にそっています。これを前原代表は、「改革の中身を競い合う姿を示すことができた」(六日)と自画自賛しています。

 総選挙前に民主党が離脱を表明した年金・社会保障両院合同会議についても、野田国対委員長は「具体的な(年金一元化の)成案を与党がいつまでに出してくるのかを確認したうえで協議のテーブルに着きたい」(九月三十日の記者会見)と発言。消費税増税を財源とした年金・社会保障制度の見直しでも、与党との「競争」を再開したい意向です。

■“守旧派”と思われたくない

 民主党が「改革競争」にこだわるのは、“郵政法案で明確な対案を出せなかったことを首相に突かれ、守勢に立たされて大敗を喫した”という総選挙敗北のとらえ方からきています。「われわれがあたかも守旧派のようにとらえられてしまった」(鳩山由紀夫幹事長、九月三十日の記者会見)との“反省”から、「改革」の旗を奪い返そうというわけです。

 しかし、野党が与党と同じ土俵で「改革競争」をすれば、それは与党の暴走を加速することにしかなりません。結局、前原民主党の立場は、「第二自民党という批判を恐れるな」(九月二十一日)という小泉首相の誘い水にのったものになっています。これでは、“巨大与党”の暴走に懸念を強める国民の期待にこたえられないのではないでしょうか。


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