2005年10月9日(日)「しんぶん赤旗」

主張

石原知事と自公民

世界平和への姿勢が問われる


 「国連憲章なんていうものを、まともに信じているバカはいませんよ」。石原慎太郎東京都知事が、都議会本会議(九月二十七日)で、こんな国連否定発言をしました。

 日本共産党は、発言の撤回を求める質問を行うとともに、議会として発言撤回と猛省を求める決議を採択するよう提案しました。

 しかし、自民党、民主党、公明党は、これに反対して都議会本会議への提出を阻止し、知事の暴言を不問に付す態度をとりました。

 これは、世界平和にたいする基本姿勢が問われる重大な問題です。

■まさに国連否定論

 石原知事の発言は、日本共産党の吉田信夫都議から「侵略戦争と植民地支配の正当化や靖国参拝をやめるよう厳しく求め」られ、「国連憲章にも明記された戦後国際政治の原点を認めるのか認めないのか」と質問されたことへの答弁です。

 「国連憲章の精神、何ですか、あなた、そんなもの。…神様みたいな存在ですか。冗談じゃないよ…今ごろ国連憲章なんていうものをまともに信じているバカはいませんよ」

 石原氏は、翌日にも、「国連憲章に何がうたわれていようと、あの内部が腐敗しきった国連の実態、…戦後六十年たってもなお戦勝国条項なるものがまかり通っているいびつな仕組み、運営とその実態」と、国連攻撃を繰り返しました(発言撤回を求めた日本共産党の村松みえ子都議への答弁、九月二十八日)。

 「国連憲章の精神」を攻撃し、「信じるバカいない」と悪ばを投げつける態度は、まさに国連を否定し、戦後の国際政治の原点を認めないものです。

 「国連憲章の精神」は、憲章冒頭の「二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い…」という言葉に象徴されています。「そんなもの…冗談じゃない」と攻撃する石原氏は、戦争をやっても構わないと言っているのと同じです。

 国連憲章や国連は、「神様」ではなく、完全でも万能でもありません。しかし、世界のほとんどすべての国が加盟し、国際紛争の平和的解決が基本的なルールであることを承認しています。それを守り、実行する努力を行ってこそ世界を平和な方向に動かすことができます。アメリカのイラク侵略戦争のように、国連憲章を無視する行動がありますが、それを「国連憲章を信じるバカはいない」から当然だといえば、世界は危険になる一方です。イラク侵略戦争を支持する石原氏や、自民党、公明党の態度は、世界平和への逆流です。

■世界を無法化する暴論

 国連否定の主要な論拠に、「戦勝国条項なるものがまかり通っている」ことをあげている点にも、石原氏の特異な立場が表れています。

 第二次世界大戦の連合国が国連をつくり、国連憲章には「憲章のいずれかの署名国の敵国であった国」という表現も残っています。ただ、石原氏が問題にするのは、表現の適否というより、「戦勝国」がつくった国連の「体制」そのものです。石原氏は、靖国神社と同じ、日本が行った戦争は正しい戦争だったという歴史観にたって、日本を「敵国」扱いして連合国が大きな権限をもつのは許せないと考えているのです。

 侵略戦争を反省せず、連合国を逆恨みする態度は、「敵国条項」に根拠を与えることにしかなりません。

 石原都知事の国連否定論は、世界を無法化する暴論であり、国民の良識で克服しなければなりません。


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