2005年10月8日(土)「しんぶん赤旗」

50年前“石綿は有害”

政府 健診で異常発生認識

吉井議員の質問主意書に回答


 深刻な健康被害が問題になっている石綿(アスベスト)について、政府は一九五六年当時から有害性を認識していたことが、日本共産党の吉井英勝衆院議員の質問主意書に対する答弁書でわかりました。政府の行政責任を明らかにする目的で先月二十一日の国会開会日に吉井議員が提出、このほど回答がありました。

 旧労働省労働基準局は一九五六年五月、石綿作業従事者に対する「特殊健康診断の指導指針」を出しています。吉井議員はこの通達について、石綿が「有害な物質」との認識をもっていたから出したものか、診断の結果はどうだったのかなどについて質問しました。

 答弁書では、石綿に関した作業が「有害なもの」または「有害の恐れのあるものであるとの認識はあった」と認めました。

 答弁書によると、この通達に基づき、五六年から六〇年にかけて毎年二、三千人の労働者が受診し、そのうち4%から11%に「何らかの異常」が出ていたことが明らかになりました。五〇年代の早くから、かなりの高率で石綿による「異常」が発生していたことを政府が承知していたことになります。

 また、質問主意書は、石綿の発ガン性を政府がいつ認識したかについても質問。(1)旧厚生省所管の病院や研究所の研究者報告で、六〇年代に厚生省が石綿による肺がんや中皮腫の発生を確認している(2)七一年の労働基準局の通達で「石綿粉塵を多量に吸入するときは石綿肺を起こすほか、肺癌が発生することが判明」とし、「胸膜などに中皮腫という悪性腫瘍が発生する」としている――と指摘しました。

 ところが、答弁書はこの通達について「当時は石綿の癌原性についての知見は確定していなかった」などと回答。通達まで出した発ガン性の認識を否定する内容になっています。

■遅れた対策の責任を

 吉井英勝衆院議員の話

 政府は、欧米の禁止規制が早かったのは、日本より「早くから石綿を大量に使用し、多くの健康被害が発生した」からだとしています。政府が五十年も前にせっかく石綿の有害性を認識していたのであるから、欧米で健康被害が多発している事実や情報を重視し、対策を早期にとるべきでした。質問主意書でも指摘したが、六〇年代には、欧米で石綿による肺がんや中皮腫の症例報告がつぎつぎ発表されています。政府はこれらの報告に無関心であったか、承知しても黙殺してきたのが実態です。政府は対策遅れの責任と反省に立った被害者救済を急ぐ必要があります。


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