2005年10月8日(土)「しんぶん赤旗」

連合が改憲見解見送り

意見割れ議論継続に


 五、六の両日、東京都内で定期大会を開いた連合(日本労働組合総連合会)は、憲法九条「改正」に踏み込んだ「国の基本政策に関する連合の見解」案の取り扱いについて、今大会の承認を見送り、議論を継続していくことで合意しました。

 見解案は、日本が攻撃された場合に自衛隊を発動するなどとし、そのために、(1)憲法九条を改正し、詳細を規定するために「安全保障基本法(仮称)」のような法律を制定する(2)憲法九条の改正はあえて行わないが、同じく「安全保障基本法」のような法律を制定する―と両論を併記。昨年から三役会で六回、集中審議し、意見を交換したほか、民主党の問題提起も受け、三役会でまとめたと報告していました。

 この見解案に対して、連合は構成組織から意見を求めていました。十四産別が意見を提出し、九条を「改正すべき」という意見と「堅持すべき」との意見に真っ二つに分かれました。

■新会長の出身は

 このなかで、九条「改正」の立場を突出してうちだしたのが、連合新会長に選出された高木剛氏が会長を務めるUIゼンセン同盟です。

 「現実化している侵害に対して、国家を守るためには相手国の攻撃内容に応じて自国の攻撃態勢を組むことが常識」といい、「九条の解釈による呪縛(じゅばく)から解き放つときである」と主張しました。すでに九月の定期大会で、九条「改正」を明記した中間報告を発表しています。

 古賀伸明委員長が連合事務局長に就任した電機連合は、全体が「考え方としては、整理されている」と評価しています。

 笹森清連合前会長の出身組織、電力総連も「残しておくべき諸原則、現実から乖離(かいり)しすぎている諸条項、新設したほうが望ましい諸条項に整理するべき時期にきていることを記述すべき」とのべています。

 一方、自治労は「憲法九条は堅持すべき」といいつつ、連合が「さまざまな考え・立場の勤労者を組織する大衆団体で、拙速な結論を得るべきではない」と指摘します。

 日教組は「『憲法九条の改正もありうる』ことを連合が提起すれば、多くの国民は連合から離れ、九条改正を党是としている自民党を喜ばせるだけ」と強調。連合が九条「改正」に立つのは「反対」としています。

 「急ぎ過ぎであり、禍根を残すことになりかねない」(私鉄総連)、九条二項の「改定」で「合憲・合法化された自衛隊が世界中に派兵され、アメリカとともに戦争に突き進んでいく道を開いてしまう」(全国一般)と再検討を求めています。

 連合会長選に出馬した鴨桃代氏が会長を務める全国ユニオンも、見解案の「二つの方法とも九条二項の『戦力の不保持』は事実上、消え去る」として、「いずれも反対」と表明しています。

■予想外に得票

 大会でも、代議員から「三役案が突如として中執に提案され、本当にびっくりした。地方や職場にいけばいくほど違和感・拒否感が強い」(全国一般)、「経過と今後の議論の場づくりで、少し丁寧な取り扱いをしてほしい。あたかも連合原案であるかのように組合員が受け取って、混乱している」(日教組)などの発言が相次ぎました。

 連合会長選は、憲法九条をめぐって対極の候補の争いになりました。その結果、高木氏が勝利したものの、鴨氏が事前の予想をこえて、百票の大台に乗る得票をして、会場がどよめきました。

 高木会長は就任後の記者会見で、「憲法を絶対変えたらいけないという思いの代議員が多くいたから、憲法をめぐる感覚が票数になったのではないか」と分析しました。

 この現状を踏まえて、高木新体制は統一見解をどうまとめるのか、今はめどがたっていません。


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