2005年10月5日(水)「しんぶん赤旗」

ポスト愛知万博

“自然の叡智”生かせるか

新たな滑走路の計画も

くらし・福祉充実こそ


 百八十五日間にわたって開催された愛知万博(二〇〇五年日本国際博覧会)は二千二百万人の来場者を迎え閉幕しました。テーマとして掲げた「自然の叡智(えいち)」を今後に生かせるのか、「ポスト万博」の方向性が問われています。 (唐沢俊治)

 「おかげさまで道路を非常に良くしていただいたので、近くなりましたよ」

 博覧会協会会長・豊田章一郎氏(トヨタ自動車名誉会長、経団連元会長)が閉幕後の会見で、記者団から万博の印象を問われ笑みを浮かべました。

 「道が良くなって、(猿投)グリーンロードも複線になりましたからね。スイスイ行けて、昔より早く藤岡のゴルフ場なんかに行けるようになりましたよ」

■県債4兆円

 今年二月に開港した中部国際空港(愛知県常滑市)とともに“二大プロジェクト”として進められた愛知万博。三月の開催に合わせ、会場へのアクセスなど巨額の税金を投入し、インフラ(基盤)整備が行われました。

 名古屋方面から万博会場を結んだ「東部丘陵線」(リニモ)の建設や「名古屋瀬戸道路」など、愛知県が「プロジェクト関連事業」として位置付けたものだけでも〇五年度までに三千二百七十八億円。その結果、県債残高は過去最悪の約四兆円(〇五年度当初予算見込み)にも及んでいます。

 一方で、愛知県は万博と空港の経済効果を二兆五千億円と発表。神田真秋県知事は九月議会で、万博後の経済政策について「(中部国際空港の)滑走路の増設はいずれ不可欠なものになる」と述べ、二本目の滑走路建設の意向を明確にしました。また、中部経済産業局が昨年発表した外資企業の誘致政策「グレーター・ナゴヤ・イニシアティブ」の推進を明らかにしています。

 「神田県政は借金づけのなか、『国際交流大都市圏』づくりの名で新たな開発路線を進めようとしている」と指摘するのは、日本共産党の林信敏前愛知県議です。

 「ポスト万博は、財政建て直しのためにも浪費型大型開発を見直し、暮らしと福祉を守る県民本位の政策転換が求められます」といいます。

■“トヨタ博”

 愛知万博はトヨタを先頭に中部財界が多くの企業パビリオンを出展。企業戦略の実験・宣伝場所とされ、“トヨタ博”との揶揄(やゆ)もありました。それでも入場者数は、目標を七百万人上回りました。

 会場建設費などを除いた運営費は、「最大100億円の黒字」(地元紙)といわれます。しかし、万博誘致に大きな役割を果たしてきた自民党ベテラン県議は、さえない表情で言います。

 「『自然の叡智(えいち)』をテーマにしたわりには、自然とのかかわりが薄かったね。ごみの分別やリサイクルなど枝葉末節は取り上げたが、根本的なことが取り上げられていない」

 地球温暖化につながる二酸化炭素など温室効果ガスは、愛知県内で年間約八千三百九十五万トンを排出(〇一年度)。全国の総排出量の6・5%を占めます。地球温暖化を正面から取り上げた長久手愛知県館でも、行政の果たす責任についての問題提起はありませんでした。

 前出県議は「政府や県が、人間と自然とのかかわりを壮大に語るべきだったのに、長久手日本館は映像技術でお客をびっくりさせただけ。万博の恩恵をどう生かしていくかが今後の課題だ。だで、万博に点数は今つけられない」。


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