2005年10月3日(月)「しんぶん赤旗」
三菱車リコール98件、89万台
7割が欠陥抱え走ってた
国交省はメーカー任せ
三菱ふそうトラック・バス(東京・品川)が一連の欠陥隠し問題で九十八件のリコール(回収・無償修理)の届け出を終えました。自動車メーカーと監督官庁・国土交通省の責任をあらためてみてみました。(遠藤 寿人)
■情報を秘匿
リコール対象台数はのべ二百六十四万台。一台で最大八件の重複リコールの例もありました。重複を除くと八十九万台で走行中の車(百三十一万台)の68%にあたります。約七割の車が欠陥を抱えたまま走行していたことになります。対策費用は千四百九十億円にのぼります。
ここに至るまでには、二人の尊い命が奪われていました。
横浜のタイヤ脱落・母子死傷事故(二〇〇二年一月)と、クラッチ系統部品の欠陥による山口県のトラック運転手の死亡事故(同十月)です。
同社は二つの事故を招いた部品を「欠陥」と認めリコールしました。
「もっと早くリコールを実施していれば娘は死なずにすんだ」。タイヤ脱落で亡くなった主婦・岡本紫穂さん=当時二十九歳=の母・増田陽子さん(55)の言葉です。
しかし、事故を裁く三つの裁判で、同社元会長の宇佐美隆被告らは依然、無罪を主張したままです。
三菱自動車は、二〇〇〇年にリコール隠しが発覚し、社会的な批判を浴びました。
同社は、一九九九年の運輸省(当時)監査時に、トラック・バスのクレーム(苦情)情報の大半を秘匿していました。
このなかにタイヤ脱落を招いた欠陥部品「ハブ」の破損も含まれていました。この時点で、過去の欠陥に対策をとっていれば死亡事故は防げた可能性が十分ありました。
同社幹部は、欠陥隠しに至った理由を「他の会社でも行われている」「ブランドイメージに傷がつく」「コストが掛かる」などとしてきました。
三菱自動車の欠陥隠し体質は、同社からトラック・バス部門を分社化した三菱ふそうにもそのまま引き継がれました。
■検証能力なく
〇二年、タイヤ脱落事故で三菱は、脱落の原因を「ユーザーの整備不良」と主張。部品の欠陥をすぐには認めませんでした。
国会で、国交省による三菱への立ち入り調査を求めた日本共産党の瀬古由起子元衆院議員の質問に、同省の洞駿自動車交通局長は、「(二〇〇〇年のクレーム隠しで)三菱は大変なダメージ、社会的なペナルティーを受けた」として三菱を擁護しました。
裁判でも同省幹部はハブの強度不足を疑いながら、「リコールと断定する材料をもっていなかった」「自ら原因を調査する能力がなく」と、メーカーの言い分を検証する能力も体制もないことを証言しています。
現行のリコール制度は届け出をメーカーの自主的判断に任せています。日本弁護士連合会の意見書は、「メーカーにとって都合の悪い重大な危険を示す情報ほど消費者に知らされることなくメーカー内部で秘匿される構図であり、これがわが国の現状なのである」と強調しています。
〇三年度のリコールの届け出件数は二百四件(うち国産車百二十三件)、対象台数は四百四十二万台で、過去最高を記録しています。国産車の不具合発生原因は、設計ミスによるものが八十二件で60%を占めています。
対象台数の増加の要因について国交省は「部品の共通化が進められたことが一因」と指摘しています。
新車開発期間を短縮し、いかに早く市場に出すか、部品の共通化などでコスト削減をどこまで進めるか、などのいまの自動車メーカーの利益最優先の姿勢がそのまま、リコール増加の背景にあります。
『製造現場から見たリコールの内側』の著者五代領さんは、「開発期間の短縮により、車両の熟成が十分出来ず市場で不具合が発覚してしまうという事が最近、多く見られるようになりました。その原因は製造ミスではなく設計ミスというケースがますます増えています。リコールはこれからも出てきてしまうだろう」と指摘します。
■原因究明機関の充実を
消費者の立場からPL(製造物責任)法問題に取り組む中村雅人弁護士の話
横浜のタイヤ脱落事故のように警察が欠陥車の事件として立件するのは異例です。通常の交通事故として処理され保険で賠償されているなかに、車の欠陥が原因のものがかなりあるはずです。
これを機に自動車事故の原因を究明する機関を充実させる必要がある。十年前、PL法の付帯決議に、原因究明機関の充実がうたわれました。しかし、いっこうに着手されず、逆に国の調査・研究機関は減らされてきました。
アメリカのNHTSA(道路交通安全局)は国家予算を使って事故原因の究明をしている。その周りに車の問題を専門に扱う消費者団体「レモン(欠陥車)クラブ」があり、市民と連携しながら問題にあたっています。
原因究明機関があるからこそ市民の関心も高まる。三菱のような欠陥隠しをしてもはばからない企業があるかぎり「民」に安全性をゆだねることは危険です。

