2005年9月26日(月)「しんぶん赤旗」

改悪介護保険法 来月から実施

施設の居住費・食費 全額負担に

特養相部屋で月2万5千円増


 改悪介護保険法で十月から施設入所の居住費・食費が原則として全額自己負担(ホテルコスト負担)となります。成立からわずか四カ月で準備も十分ととのわないままの実施。国民の負担を増やして政府の財政支出を減らしていく小泉内閣の「小さな政府」計画の一つです。

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■どうなる負担増

 対象は、特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護療養型医療施設の三施設です。短期で入所するショートステイにも適用されます。また、デイサービス、デイケアなど通所サービスの食費も全額自己負担となります。

 実際の負担額は施設が決めます。厚生労働省が示している所得に応じたモデルケースが基準になります。

 厚労省モデル(グラフ)は、住民税課税世帯で特養ホームの相部屋の場合、食費がこれまでの月二万六千円から四万二千円に、居住費が負担ゼロから月一万円に上がります。通常の一割負担と合わせた合計負担額は月二万五千円の引き上げになります。年間にすると三十万円もの負担増になります。

 厚労省が推進している全室個室の特養ホーム(ユニット型施設)の利用者(住民税課税世帯)の場合、月二万―三万円程度の負担増になります。これまで居住費の負担がゼロだった従来型個室は、新たな居住費・食費負担と一割負担を合わせると月四万八千円もの大幅な負担増になります。

 日本共産党の追及により、すでに従来型個室に入所している人などに対しては三年半の間、居住費を相部屋相当(月一万円)とする負担軽減の経過措置がとられます。

■低所得対策は…

 低所得の負担軽減として、生活保護受給者や住民税非課税世帯には負担の上限額があります。住民税非課税で年金が年間八十万円以下の特養ホームの相部屋利用者の場合、食費は月一万二千円、居住費は月一万円、一割負担は月一万五千円が上限となります。(これらの軽減措置は申請が必要です)

 しかし年金などの収入が年間八十万円を超える人で、特養ホームの従来型個室を利用する場合の上限額は七万円。これまで月四万円の負担が、一気に三万円も増えます。これでは国民年金の満額受給者(月六万六千円)でも払いきれず、施設からの「締め出し」となりかねません。

 介護保険発足前の措置制度のときからの特養ホーム入所者は、措置制度のときの負担額を超えないようにする軽減措置が二〇一〇年三月まで継続されます。

 社会福祉法人が運営主体の特養ホーム、訪問介護、デイサービスなどの利用者は、同法人による利用者負担減免制度を受けられます。住民税非課税の場合、年収が単身世帯で百五十万円以下、夫婦二人で二百万円以下などの条件つきで、市町村への申請が必要です。

■負担増の中止減免を求める日本共産党

 日本共産党は、十月実施の負担増中止を求めるとともに、自治体による独自の減免制度の導入を各地で要求しています。

■企業の参入に助け舟

■「官から民」を加速


 介護保険のホテルコスト導入は、給付抑制をねらったものですが、それにとどまらず「官から民へ」の流れを加速するねらいもあります。

 公的サービスへの企業の参入機会の拡大を求めている政府組織「規制改革・民間開放推進会議」(議長・宮内義彦オリックス会長)は、第一次答申(二〇〇四年十二月)で、特別養護老人ホームの利用者負担が実質四万円で「極端に少ない」と非難し、ホテルコストの導入を要求しています。民間の有料老人ホームなどはホテルコストを自己負担としている点をあげ、「対等な競争条件が阻害されている」「ホテルコスト等を利用者負担とすることにより…競争条件の同一化がはかられる」とのべ、介護保険施設への導入を〇五年中に実施するよう求めました。

 民間の有料老人ホームの利用者負担は月額十七万円で、入所時の納入一時金は千百五十五万円にも及びます。この間、民間大手企業が有料老人ホームに続々参入しています。介護ホテルコスト導入後の特別養護老人ホームの利用者負担(課税世帯)は月額十三万円程度になり、民間有料ホームの負担に近づくことになります。十月実施を前に課税世帯向けに厚労省モデルを超える利用者負担を提示する動きもでています。

■医療適用も狙う

 小泉内閣は、ホテルコストを医療(入院患者)にも適用することを狙っています。

 六月に閣議決定した「構造改革」の基本方針(「骨太」2005)は、「小さな政府」のための歳出削減を強調。このなかで社会保障の「一体的見直し」として、医療では「保険給付の内容について相当性、妥当性などの観点から幅広く検討を行う」と明記しています。

 次の通常国会に提案予定の「医療改革案」で、過大な給付は公的保険の給付対象から除外していく方針を示したものです。財務省は「公的医療保険がカバーする範囲の見直し」として、入院患者について食費・居住費を給付から外すよう強くもとめています。「医療改革案」を担当している厚労省も検討をすすめています。

 医療へのホテルコスト導入は財界が強く求めている社会保障改悪です。日本経団連は、次期「医療改革」への提案(五月)のなかで、すぐに効果がでる医療費抑制のための実施計画をつくるよう政府に求め、このなかで食費・居住費の自己負担化を提案しています。


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