2005年9月15日(木)「しんぶん赤旗」

ドイツ総選挙最終盤

連立与党 大量失業で国民の批判

保守中道連合 大企業負担減うちだす


 ドイツ連邦議会(下院)総選挙(十八日投票)が最終盤に入っています。政権交代を訴えるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と自由民主党(FDP)の保守中道連合に守りの連立与党、社会民主党(SPD)、90年連合・緑の党。根本的な変革を主張して支持を伸ばす左翼党。選挙で問われるおもな政治課題をみました。

(ベルリン=片岡正明)


グラフ

 ベルリンに住むゲジーネさん(30)は勤めていた会社が倒産し三月から失業中。約五百万人、11―12%の大量失業のなかで「職を見つけられるか」という不安の中で選挙を迎えます。「青年の失業をなくしてくれる」党に投票するつもりです。

 前々回一九九八年の総選挙時、シュレーダー首相は失業者を四百万人から三百五十万人に減らすと公約しました。失業は一時減少に向かいましたが二〇〇四年からは増え続け、国民の大きな不信を買っています。

 「ドイツのチャンスをつかもう―成長、雇用、安全」がCDU・CSUの選挙スローガンです。「二期七年の社民・緑連合でドイツ経済は危機に陥った」と攻めたてます。

 社民党が失業対策の決め手とするのが包括的な経済政策である「アジェンダ二〇一〇」と労働市場改革である「ハルツ改革」です。

 ドイツは欧州屈指の高い社会保障を実現してきましたが、それを二十一世紀、経済のグローバル化(地球規模化)と高齢化社会の進行のもとで維持するには改革が避けられないというのが「アジェンダ二〇一〇」。社会保障、自治体財政、医療制度で歳出を削減する一方、研究開発、労働市場改革で雇用を増やそうという試みです。

 青年雇用対策で職業訓練への助成などが積極的評価を受けましたが、むしろ、年金の凍結や診療時の本人負担導入など社会保障の削減に国民は強い批判を向けています。

 「ハルツ改革」では、失業者の起業を助成金や減税で援助しましたが、失業保険の給付期間を現行最大三十二カ月から来年から十二カ月に短縮、また失業扶助金を削減して反発を買いました。昨年夏以来、各地に抗議デモが広がっています。

 大量失業が長年続く閉塞(へいそく)感から、保守陣営の主張する「改革」に期待が集まり、支持率で社民党を上回っています。CDU・CSUの首相候補メルケル氏が「ドイツ史上初の女性首相」になるかもしれないという期待もあります。

 しかし、CDU・CSUの社民党批判は、現政権の社会保障削減が「遅すぎる」というもの。大企業の負担を減らすことが政策の主眼です。国会では、高額所得者減税や失業給付の整理・削減が両党共同して行われました。

■左翼党 時短で雇用増を主張

 これに対して左翼党は両党を批判して支持を増やしています。「シュレーダー首相の改革は金持ちに税金をまけて貧乏人から金を巻き上げる政策だ」―今月三日、ドレスデンで行われた集会で、同州比例代表候補カーチャ・キッピング氏(25)は聴衆にこう訴えました。

 左翼党は旧東独部に地盤を持つ民主的社会主義党(PDS)が改称した党です。選挙では旧西独部中心の左翼政党「労働と社会的公正のための選挙代案」(WASG)と統一選挙名簿をつくり選挙戦に臨んでいます。失業保険・失業扶助「改悪」の撤回、全国最低賃金制の確立などを打ち出しています。失業対策では労働時間の短縮による雇用増を主張します。


■イラク戦争支持の党なし

 前回二〇〇二年九月の総選挙でシュレーダー政権は、経済不振から「敗北必至」といわれながら辛勝しました。米国のイラク戦争に反対を貫いたことが国民の支持を受けたためです。与党のその姿勢はいまも変わらず、国民から高く評価されています。

 CDU・CSUは選挙戦で、シュレーダー政権がイラク戦争で米国との関係を損ねたと批判し「米国との完全信頼のパートナーシップ」「国際紛争と対テロ戦争への強い関与」を掲げます。

 ただし、強い反戦世論を意識して、イラク戦争を支持するようなことはいいません。

 新聞紙上の投書欄でも「社民党が三年前にイラク戦争に反対したことは評価できる。CDUの政権だったら兵隊を送っていたでしょう」といった若者の意見が目立ちます。

 左翼党はイラク派兵反対はもちろん、アフガニスタンなどすべての外国からのドイツ軍部隊の撤退と米国の核兵器の撤去を要求しています。

 長年、ドイツの平和運動に携わってきたハンスペーター・リヒター氏はいいます。

 「シュレーダー首相はイラク戦争のときに米軍機にドイツの基地、空域の使用を許した。現政権と保守の間には平和政策で大きな違いがあるわけではない。唯一の代案は左翼党です」


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