2005年9月4日(日)「しんぶん赤旗」

ハリケーン被害

軍事優先の“人災”

温暖化軽視も


 ハリケーン「カトリーナ」が米国南部にもたらしている惨状に、「世界で最も豊かなはずの国でこんなことが起こるのか」と、世界中が驚いています。ハリケーンはもちろん自然災害ですが、死者が一万人に達するとも予想される事態に発展したのは人災であり、イラク戦争・占領の影響が濃厚だとの指摘が米国内外から起こっています。

 第一は、イラクなどでの「対テロ戦争」の戦費を捻出(ねんしゅつ)するため、災害対策費が削減されてきたことです。

■予算も人もイラクに出す

 堤防建設を担当するルイジアナ州の陸軍工兵隊は、昨年のハリケーンで大きな損害を受けた後、ニューオーリンズ市の堤防強化と洪水管理のため百八十億ドルが必要だと指摘しました。しかし連邦政府は、これにまったく予算をつけませんでした。ブッシュ政権は逆に、同工兵隊の資金を二〇〇一年から半減し、来年はさらに20%削減することを提案しました(英紙フィナンシャル・タイムズ三・四日付による)。

 第二は、イラク戦争などの長期化による正規軍不足を補うために州兵が動員されていることです。これにより、本来なら州兵が担うべき緊急時の警察や消防の活動が手薄になり、対応の遅れの大きな要因となっています。全米の州兵三十三万人の64%にあたる二十一万人以上がイラクとアフガニスタンでの軍事行動に動員されてきました。

 ニューヨーク・タイムズ二日付社説は、これを「人災」だと指摘。「ルイジアナとミシシッピのすべての州兵がハリケーン襲来前の避難などに動員されていれば、事態はこれほどではなかっただろう」と述べています。

 第三に、〇一年の9・11対米同時テロ以降、テロ対策強化の名の下で、災害対策に責任を負う連邦緊急事態管理庁(FEMA)の弱体化が進んでいます。

 ハリケーンが強大化しているのは、ブッシュ政権が軽視してきた地球温暖化の影響だとの指摘も、改めて強まっています。過去百年間に地球の気温は〇・七度以上上がり、海上の気温も〇・六度上昇しました。これが一般に台風やハリケーンの破壊力を強めているといいます。

 しかしブッシュ政権は、地球温暖化の影響を軽視し、温暖化防止のための京都議定書の発効を妨害。今年一月に神戸で開かれた国連防災世界会議でも、温暖化が自然災害の増加の要因の一つになっているとする個所を採択文書から削除せよと要求し、交渉を難航させました。

■日本も防災費削る動きに

 米国の圧力の下、日本でも、軍事予算を増やすために災害対策費を削る動きが強まっています。米国の惨状は、決して他人事ではありません。(坂口明)


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