2005年8月28日(日)「しんぶん赤旗」

世界で失敗 郵政民営化

各国の実情をみる


 小泉自民党と公明党があくまで強行しようとする郵政民営化は、庶民に不便を強い、金融から排除するもの。民営化を試みたどの国もうまくいかず、歓迎されてもいません。公営に戻した国もあります。実例でみてみましょう。


■局閉鎖、料金値上げ

 民営化では「営利第一」が追求され、利益のあがらない地域の郵便局(網)が消滅、サービスは低下、郵便料金もあがり、住民にとっていいことはなにもありません。

 よく例にあげられる民営化を進めたドイツ。一九八九年に民営化を決定。九〇年、郵政事業はドイツポスト(郵便)、ドイツテレコム(電話通信)、ポストバンク(預貯金)に分割されました。

 その結果、九〇年当時、二万九千あった郵便局は二〇〇三年末には一万三千にまで激減。多くの地方で郵便局が廃止され、住民は遠くまで出かけなければならず、配達回数も半減しました。

 ニュージーランドでは、八七年に、郵政事業は民営化で三分割されました。うち郵貯はオーストラリアの銀行に売却されました。ニュージーランドでは規制緩和で、銀行が外国資本の傘下に入り、サービスに手数料をとるほか、支店の閉鎖が相次ぎました。郵貯も同様の事態となりました。

 民営化で黒字を増やし「成功」しているとして、ドイツポストやオランダの例があげられます。郵便料金値上げ、企業買収、民営化で放棄した財産の切り売りなどで利益をあげたためです。本来の国民サービスとは無縁です。

■自治体首長が反対

 欧州連合(EU)では、二〇〇九年までに郵政事業の「完全自由化・規制緩和」が目指されています。しかし、国民の懸念が広がり、反対運動が高まっています。

 フランスでは、「郵政の自由化に備える」として、国営郵便「ラ・ポスト」が、一部地域で実験的にコスト削減、不採算局の縮小・整理統合を進めています。ロワールアトランティック県では二十六のフルタイム業務の郵便局が九に減らされました。

 この動きに対し、全国で農村部を中心に、五千の自治体首長が反対に名を連ねるなど「公共サービスと雇用を守れ」のたたかいが広がっています。

 スウェーデンでは、九三年の自由化・規制緩和実施以来、十年のうちに郵便局数は五分の一に、郵便料金は倍になりました。経営も赤字に転落、二〇〇二年の赤字額は八千七百万ユーロ(約百十六億六千万円)に達しました。資産の大半が切り売りされました。今日では、切手を買ったり小包を受け取るのは、スーパーマーケットやたばこ屋などに委託された全国三千カ所の郵便取り扱い所です。

 英国では、政府が全株を保有するロイヤルメールが郵便事業を実施しています。〇二年、自由化に向けて「利益向上」を掲げて全国九千の郵便局のうち都市部を中心に三千局の閉鎖を打ち出しました。しかし国民の懸念を考慮せざるを得ず、過疎地については、助成金を出しサービスを維持するとしています。郵便労組は「民間企業は公共サービスに関心がない。利益だけを追求し、サービスはよくならない」と完全自由化に反対しています。

■公営復活の動きも

 民営化の失敗や弊害を目の当たりにして、もとに戻す動きが進んでいます。

 小泉首相が民営化を賞賛したニュージーランドでは、小口口座の運営、低利融資などかつての便利な郵貯の復活を求める世論が高まり、〇二年、郵便貯金の「キウイ銀行」が誕生しました。店舗を国内最大の三百店に拡充し、「利用しやすい」と国民に喜ばれています。

 同国の郵便分野では、営利本位の民間企業では公営の手厚い全国的なサービス網に歯が立たず、事業に参入したものの撤退が相次いでいます。

 アルゼンチンでは、九七年に郵便事業が民営化されました。ここでも六千の郵便局が三分の一減り、郵便料金も平均四倍化の大幅値上げ。そして国民の非難のなか二〇〇三年に、国営に戻されました。いま国民の八割以上が国営存続を支持しています。

 さらに、ニュージーランドの例にみたように、分割・民営化した郵貯の失敗が相次ぎ、もとのように郵便局の業務と再合体する傾向が生まれています。

 スペイン、フランス、オーストリアもそうです。ドイツのポストバンクも全国的な営業網をつくれず、結局、ドイツポストに併合されました。

■米国は民営化せず

 米国、カナダ、韓国では郵便事業は公営です。

 米国では、ブッシュ大統領命令で設置された郵便改革のための委員会が二〇〇三年に提出した報告で、これまでどおり政府機関のままとし、民営化を退けています。

 同報告は「ユニバーサルサービスの品質を維持しながら、郵便利用者の負担と納税者の負担を最小限に止めるように努力しなければならない」と述べています。

 同時に、米国や英国では公営の郵貯がなく、高い口座手数料を取られるなどのために、米国では低所得者層の38%、英国では五世帯に一世帯が銀行口座を持てない状況です。

    ◇

 国際的にも破たんと弊害が明らかな郵政民営化を“結構だ”と言い続ける小泉首相の無責任さが問われています。


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