2005年8月18日(木)「しんぶん赤旗」

小泉政治の4年

国民には痛み

大企業には大もうけ

これでなにが「改革」か 


■財界・大企業と二人三脚

■余剰資金は82兆円

 国民には空前の「痛み」、大企業には空前の大もうけ―これが、財界と小泉内閣が二人三脚で断行してきた「構造改革」の結果です。

 小泉内閣のもと、国民の所得(雇用者報酬)は四年連続で減少しています。その一方で、大企業は史上空前の大もうけをしています。二〇〇五年三月期決算でトヨタ自動車が二期連続一兆円の純利益(最終利益)を稼ぎ出したのをはじめ、大企業の三分の一が過去最高の収益(経常利益)をあげています。大企業は余剰資金が〇四年の一年で十六・二兆円もふくらみ、八十二兆円に積み上がる「金余り」状態です(民間シンクタンク調べ)。

■一喜一憂するな

グラフ

 小泉流「構造改革」で明るさが出てきたのは財界・大企業だけです。それもそのはず、小泉流「構造改革」は、財界・大企業が求めてきたものだからです。

 「(『構造改革』の)機は熟した」(当時の今井敬経団連会長)と財界は、小泉政権の誕生(〇一年四月)を歓迎。財界は、雇用と設備と借金の「三つの過剰」を減らせと、「構造改革」の推進を主張。これを忠実に実行に移したのが小泉内閣でした。

 「構造改革をやれば、失業率が高まるのは当たり前」「失業率などの数字に一喜一憂すべきではない」(当時の今井経団連会長)と、財界はハッパをかけつづけました。小泉内閣は「不良債権処理」の名でリストラや中小企業つぶしを進め、リストラすればするほど減税する「産業再生」法を延長・改悪し、大企業の人減らしを後押し。大企業は「リストラ効果」で「V字型回復」をはかりました。

 経団連と日経連が統合して〇二年五月に誕生した日本経団連(会長・奥田碩トヨタ自動車会長)は、「依然として改革のスピードは遅い」(奥田会長)と「構造改革」推進を旗振り。「政党通信簿」で、自民党と民主党を競わせ、「金の力」で財界の要望を実現させようとしています。

 例えば、政党の政策評価の基準として、消費税率の引き上げの一方で、法人課税の引き下げや企業の社会保障負担を引き下げることを求めました。社会保障の給付削減と国民負担増を大胆にすすめたうえで、大企業の税と社会保障の負担を軽くするために、消費税増税を迫るという露骨なものでした。

 自民党は、〇七年度をめどに「消費税を含む税体系の抜本的改革を実現」する(〇五年度税制「改正」大綱)として、財界の要望にこたえようとしています。

■総資本の声受け

 個別政策だけではありません。

 「日本経団連の政策提言は、わが国経済を代表する総資本の声だととらえている。できるだけ取り入れるよう努力したい」。与謝野馨・自民党政調会長は、三月二十九日開かれた日本経団連の「自由民主党と政策を語る会」でこう語っています。

 財界の身勝手な要望を丸のみしようとする小泉「構造改革」は、国民に「痛み」につぐ「痛み」を与えるものにしかなりません。

■きっぱり対決  共産党

■「痛み」後押しした民主党

 日本共産党は小泉「構造改革」の最初から「国民生活を痛めつけ、日本経済を大不況につきおとした、すでに破たんが証明された路線」(志位和夫委員長、二〇〇一年五月)ときっぱり反対を表明し、家計を直接温める対策を求めてきました。

 当初、「改革」の最優先課題とされた「不良債権の早期最終処理」については、大倒産と失業の激化を招くと、民間シンクタンクの試算も示して追及してきました。その後の中小企業の倒産、失業者の増大は、この警告の正しさを示しました。

 社会保障の連続改悪にも、その本質を明らかにして反対してきました。

 これにたいして民主党は「改革のスピードを競い合うことは、やぶさかでない」(鳩山由紀夫代表=当時、〇一年五月)「社会保障改革においても、痛みを伴うことはやむを得ない」(枝野幸男政調会長=当時、同前)とのべ、国民に「痛み」を強いる小泉「改革」を後押ししました。

 いまでも民主党の岡田克也代表は「小泉さんが四年前にいう政策を聞いて驚いた。かなりのものが民主党の政策だった」とのべ、「構造改革」断行の立場から「数々の改革が不発に終わった」ことを問題にしています。

■自公・小泉内閣による国民への「痛み」押しつけ

 【医療制度改悪】

 ●健保サラリーマン本人3割負担の導入=2003年4月実施(自 公 保)

 ●お年寄りの患者1割負担の徹底=02年10月実施(自 公 保)

 【年金制度改悪】

 ●物価スライドで年金額を0.9%削減=03年4月実施(自 公 保 民)

 ●物価スライドで年金額を0.3%削減=04年4月実施(自 公 民)

 ●改悪年金法による厚生年金保険料引き上げ=04年10月実施、以後2017年まで毎年9月実施(自 公)

 ●改悪年金法による国民年金保険料の月額280円引き上げ=05年4月実施、以降2017年まで毎年4月実施(自 公)

 【介護保険制度】

 ●改悪介護保険法による施設入所者の居住費、食費の全額自己負担=05年10月実施予定(自 公 民)

 【生活保護制度】

 ●老齢加算の段階的縮小・廃止=04年4月から3年間で(自 公)

 ●母子加算の削減=05年4月実施(自 公)

 【児童扶養手当制度】

 ●閣議決定による施行令改悪で削減=02年8月から実施(自 公 保)

 ●支給開始から5年後に最大で半額削減=03年4月法施行、実際の適用は08年4月から(自 公 保 民)

 【税制、その他】

 ●所得税の老年者控除廃止、公的年金等控除の縮小・廃止=05年1月から実施

 ●消費税免税点を3000万円から1000万円に引き下げ=04年4月実施

 ●雇用保険料引き上げ=02年10月、05年4月実施

 ●雇用保険の失業給付削減=03年5月実施

 ●国立大学授業料値上げ=05年4月実施

 (注)カッコ内は賛成政党、自は自民、公は公明、保は保守(当時)、民は民主の各党

 小泉純一郎首相は「郵政民営化は改革の本丸だ」といい、「改革を止めるな。」を自民党の選挙スローガンにしています。しかし、この四年間の「改革」を思い出してください。一家の大黒柱が職をなくした不安、病気になってもお金がなければ病院にもいけない…そんな生活が国民を直撃しました。首相は「痛みに耐えれば明日がくる」といいましたが、実態はどうだったでしょうか。

■医療・年金・介護

■断ち切られる“命綱”

 「これからは『給付は厚く、負担は軽く』というわけにはいかない」(二〇〇一年五月)

 小泉首相は就任直後の所信表明でこうのべました。これまでの給付は「過大」だとして、必要なサービスは大幅カット(給付減)、負担(保険料や利用者負担)は大幅に引き上げるという、社会保障「構造改革」を打ち出したものです。「痛み」は、医療、年金、介護などあらゆる分野にわたりました。(表参照)

■三割負担を強行

 医療では、サラリーマン健保本人への三割負担(それまで二割負担)を強行しました。負担増で「受診を控えた」患者が六割(〇三年九月、全国保険医団体連合会の調査)にのぼりました。

 高齢者への医療では負担を軽くするための定額制(当時の外来で一回八百五十円)を廃止。病気に苦しむ患者ほど負担が重くなる定率負担(原則一割)に転換。在宅酸素療法を利用していた患者が負担増で治療を中止する事態も生まれました。

■負担増で給付減

 年金では、保険料を毎年引き上げていく連続負担を導入。老後に受け取る給付は、少子化と寿命の伸びに合わせて目減りさせていく仕組み(マクロ経済スライド)にしました。

 どれも制度始まって以来の改悪。景気が悪くなっても国民にはしわ寄せしないという公的年金の考え方を変えたもので、実際の年金額も戦後初めて物価スライドでカットされました。

 平均月額四万六千円余という低額の国民年金まで削減。「こんな引き下げをおこなったら生きていけないではないか」という日本共産党の小池晃参院議員の追及に、坂口力厚労相(当時)は「(給付を下げるという)言いにくいことを言ったところに意義がある」とのべ、生存権を守る立場を投げ捨てました。

■年39万円負担増

 介護保険では、「ホテルコスト」と称して特別養護老人ホームなど施設入所者の居住費、食費を保険から外しました。利用者の全額自己負担とする改悪です。施設入所者一人あたり年間三十九万円もの負担増を押しつけます。

 その改悪の理由も、在宅サービスの利用者に比べ、施設入所者が介護保険のお世話になって食費や家賃を年金からださないのは不公平という、政府に都合のいい口実です。年金と介護の「重複給付の是正」が目的で、国民より財政、「民より官」優先の改悪です。

 給付では、「過剰介護」という根拠のない理由をふりまき、家事代行など軽度者のサービス利用を制限してきています。

 いずれも財界が強く求めていたものです。

■弱いものいじめ

 生活保護費や児童扶養手当の削減など、“弱い者いじめ”の改悪を実施したのも、小泉「構造改革」の特徴です。

 「一年間で保護費の一カ月分が減り、朝は食パン一枚とコーヒー、昼はほとんど食べなくて、夜は野菜が中心」。生活保護費のうち七十歳以上の高齢者に支給される老齢加算を減額された岡山市の女性(76)は訴えます。月額一万七千九百三十円だった加算は、二回の減額で〇五年四月には三千七百七十円にまで減らされました(東京二十三区など)。老齢加算は基本的に〇六年度に廃止されます。

 母子家庭の“命綱”ともいえる児童扶養手当も、支給開始から五年以降は最大で半分まで減額されます。

■中小企業に冷たい仕打ち

■倒産・廃業 自殺者も

グラフ

 「これしか会社、社員を救う道はなかったのです。まだまだやり残したことがありますが…よろしく頼みます」

 大手銀行による強引な債権回収にあった東京都内の建設会社社長が二〇〇一年、こんな遺書を残してビルから飛び降り自殺しました。小泉内閣が「不良債権の早期最終処理」の名で債権回収の大号令をかけたさなかに起きました。

 小泉内閣の四年間に大銀行の不良債権は減りましたが、中小企業の倒産は六万六千件を超え、同じ時期に中小企業向け貸し出しは五十五兆円も減ってしまいました。

 「不良債権早期処理」とは、貸し渋りや貸しはがしを横行させ、不況にあえぐ中小企業を倒産や廃業に追い込むものでしかなかったのです。

 こんな冷たい仕打ちをしておきながら、小泉首相は「人生で大切なことは挫折してもくじけずまた立ち上がること」と言いました(〇四年二月)。

 大手銀行には惜しみなく公的資金を注ぎ込む一方で、国の中小企業予算はわずか千七百三十億円(〇五年度)。アメリカ軍への「思いやり予算」二千三百七十八億円より少なく、国の予算(一般歳出)に占める割合は0・37%にすぎません。

 「規制緩和」の名のもとに大型店の出店・退店の時間や深夜営業を野放しにしたり、下請けに対する単価の切り下げや無理な納期の押し付けなど親企業の横暴勝手を放置してきました。

 「景気回復」といわれるなかでも、中小企業の景況は水面下に沈んだままです。

■リストラ・人減らし支援

■非正規雇用3割にも

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 小泉内閣がやってきたことは、大企業によるリストラ・人減らしを応援し、「不良債権の早期処理」の名で中小企業をつぶして失業者を増やすことでした。

 二〇〇三年、労働者派遣法を改悪して製造業や医療分野にも派遣を拡大。正社員を減らして、不安定で低賃金の非正規雇用に置き換えるリストラを強力に後押ししました。

 リストラをすればするほど企業が減税を受ける「産業再生法」をさらに改悪して延長。これには民主党も賛成しました。

 完全失業者はほぼ三百万人という深刻な雇用情勢が続き、パートや派遣など非正規雇用はついに労働者の32・3%と過去最高になりました(総務省の労働力調査、〇五年一―三月平均)。とくに十五―二十四歳の若い世代では48・2%が非正規社員です。

 劣悪な条件で全国を渡り歩くことから、現代の「たこ部屋」と呼ばれる「業務請負」労働者も増えています。

 こうした大量失業や生活苦を反映して、毎年三万人もの人々が自殺に追いやられています。

 ところが、小泉首相は「今の構造改革がなかったら、もっと痛みが増える」(〇三年七月)と冷たく言い放ちました。

 失業者をつくり出しておきながら、その命綱である失業給付額を削減したところにも小泉内閣の冷たさが現れています。

 深刻なのは若者で、完全失業者の三人に一人、百万人が二十代です。就職も進学もしない「ニート」(無業者)の増大が社会問題化しています。この問題でも小泉首相は「勤労の重要性の認識、いかにやる気を持ってもらうかだ」(〇四年三月)と責任を棚上げし、「若者の意識」にすり替えてはばかりません。

 「改革を止めるな」という小泉内閣は今後も、労働基準法を改悪して金さえ払えば解雇が自由にできるようにしたり、ホワイトカラーに残業代を払わなくてもいいようにすることなどをねらっています。


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