2005年8月17日(水)「しんぶん赤旗」

地震の活動期

対策待ったなし


 宮城県沖を震源とした十六日の地震では、東北を中心に北海道から四国まで揺れが広がりました。東北地方で震度6弱以上を観測したのは、二〇〇三年七月二十六日の宮城県北部の地震以来。今回死者はいないものの多数の負傷者が出て、交通や電力などのライフラインが一時寸断されました。「地震の活動期」といわれる日本列島。地震の防災対策はいま「待ったなし」の課題です。(宇野龍彦)

■予測の場所

 今回の震源域は、政府の地震調査委員会が地震の発生が切迫していると予測していた「宮城県沖地震」とほぼ同じ場所。気象庁地震火山部の関田康雄地震情報企画官は十六日の会見で、「地震のメカニズムは想定された宮城県沖地震と同じ。規模が少し小さいが、今後、震源域などを精査して、予想されていた地震なのかを地震調査委員会で協議する」と説明しました。

 一九七八年六月に発生した宮城県沖地震(M7・4)は死者・不明二十八人をだし、ブロック塀の倒壊や宅地造成地で鉄筋コンクリート造建物が倒壊するなど新しい都市型地震災害の危険を示しました。

■深刻な首都圏

 昨年十月の新潟県中越地震(M6・8)、ことし三月の福岡県西部の地震(M7・0)に続く今回の地震とM7級が連続しました。これは日本列島が大地震の活動期にはいっていることをあらためて印象づけました。

 とくに「切迫性」が指摘される首都圏の直下型地震の場合、都市機能マヒなどで深刻な被害が予測されています。

 政府の中央防災会議の専門調査会(伊藤滋都市防災研究所会長)は、今回の宮城県沖の地震や新潟県中越地震と同規模以上の地震の場合、最悪で阪神・淡路大震災の倍にあたる死者約一万二千人と想定。被害総額は約百十二兆円にもなると試算しています。

 東京二十三区で震度5強を記録した七月二十三日の千葉県北西部の地震では、鉄道など交通網がマヒし、都市防災のもろさがあらためて露呈しました。しかも、過去に大きな災害を引き起こした地震の再来が予想されているのは宮城県沖だけでなく、東海地震、東南海・南海地震などの太平洋沿岸はもちろん、北海道から九州・沖縄まで全国各地に及んでいます。

■防災に予算を

 東海地震の「予知」を大前提にした政府の地震防災対策には欠陥があり、全国どこでも地震防災対策を強化していくことが今こそ切実に求められています。

 しかし、消防白書(二〇〇四年版)によると、学校などの防災拠点の耐震化の全国平均は目標にたいし約54%にすぎません。自治体の防災無線の整備率も同約68%。阪神・淡路大震災を教訓にしてはじめた地震防災緊急事業五カ年計画の達成率も約76%。国民の生命、財産などを守る防災対策が緊急に必要なのに、「近年の財政事情の悪化等により、防災基盤の整備は計画どおりに進められていない状況にある」(同白書)というのが実態。小泉内閣の「構造改革」の名で「防災最前線」といわれる気象庁測候所の廃止・無人化まで進められています。

 その一方で、自衛隊のイラク派兵費用は、開始以来六百五十億円、在日米軍への「思いやり予算」は年間二千三百七十八億円にも。国民の安全・防災予算は低く抑えられる一方で、官房機密費や警察報償費(総額三千四百四十三億円)には湯水のように国民の血税がつぎこまれ、選挙買収にまで使われた政党助成金はこの十年半で総額三千二百八十四億円以上にもなります。

 こうした税金の無駄づかいをきっぱりあらため、地震防災と被災者生活支援にこそ予算と人員を配置することがいま政府に迫られています。


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