2005年8月13日(土)「しんぶん赤旗」

「構造改革」の名での国民いじめの政治を許さない

――郵政民営化の動きにとどめの審判をくだそう

志位委員長の訴えから


 日本共産党の志位和夫委員長は十一日に千葉・JR津田沼駅前、十二日にJR横浜駅前で街頭演説を行いました。「この選挙で問われているものは何か」と問いかけた志位氏は、(1)「構造改革」の名での国民いじめの政治、(2)庶民への大増税の問題、(3)憲法をまもりぬくのかどうか、(4)日本外交のゆきづまりの問題についてのべ、日本共産党の前進を訴えました。志位氏の訴えのなかから、冒頭の部分を紹介します。

■郵政問題――争点の一つと位置づけ正面から迎え撃つ

 みなさん、この選挙で問われているものは何でしょうか。

 第一に、「構造改革」の名で国民いじめの政治をつづけることを許していいのか、これが問われていると思います。

 小泉首相は、解散の日の夜の記者会見で、この選挙を“郵政民営化の是非を問う選挙にしたい”といいました。“新しい国会で、もう一度、郵政民営化の法案を出しなおして、何がなんでも通すのだ”といいました。

 郵政民営化というのは、衆議院と参議院の審議のなかで、つぎつぎと問題点が明らかになり、否決・廃案にされたものですから、ほんらいならこの事態をうけて断念するというのが筋であります。ところが、小泉首相は、断念しないで、「国民の審判をあおぐ」という。それならば、私たちは、この問題を争点の一つとして位置づけて、正面から迎え撃ちたいと思います。

■首相の民営化推進論は、「道理なし」が国会で明らかになっているもの

 解散の夜の記者会見のなかで、小泉首相は、いろいろな「理由」をあげて郵政民営化が必要だということをいいました。しかし小泉首相がのべたことは、実は国会の論戦ですべて「道理がたちません」と決着がついている問題なのです。すでに国会では白黒が明らかになった問題を、もう一度蒸し返し、繰り返しただけでありました。

 たとえば、首相は、「民営化すれば、いまよりサービスがよくなる」といいました。しかし、民間の大銀行をみてください。採算のとれないところからは、どんどん店舗を撤退させているではありませんか。過疎地だけではなくて、都市部でも店舗をどんどん閉鎖しています。六年間で全国で四千もの店舗を減らしています。郵貯や簡保が民営化されたら、民間の銀行と同じように、採算のとれないところから撤退し、身近な金融の窓口がなくなってしまうのは、明らかではないでしょうか。

 それから、大手の銀行にいきますと、口座手数料をとりはじめています。UFJ銀行では、五十万円以下の預金の人から、月六百三十円もの口座手数料をとっているものもあります。ほとんど利息を払わないのに、手数料だけとる。郵貯・簡保が民営化されたら、すでに大手銀行ではじまっているような高い手数料がとられ、口座をおくこともできなくなるではありませんか。口座をおくということは、年金を受け取ったり、公共料金を払ったり、生活に欠かせない権利です。それが奪われてしまうことになる。「サービスがよくなる」どころか、庶民が金融サービスから排除されることになってしまいます。

 また首相は、「郵政民営化すれば、公務員を減らすことができる」といって、あたかも民営化で税金が節約できるかのようなことを繰り返しました。しかし、いまの郵政公社というのは、「独立採算制」になっていて、国民の税金は一円も入っていないのです。郵政の職員の給料には、税金を一円も使っていないのです。民営化されたら、あたかも税金が節約されるかのような小泉首相の言い分は、まったく根拠のない話であります。

 どこからみてもまったく理屈がたたないのに、小泉首相はなぜ、あんなに郵政民営化に「熱中」しているのか。これには理由があるのです。この動きの根っこには、アメリカと日本の大銀行・保険会社の要求があります。小泉首相は、ずっと「大蔵族」というのをやっていて、昔から大銀行と深いつながりがあった。大銀行からしてみたら、サービスのいい郵貯や簡保、郵便局ががんばっていたら、自分たちのもうけの邪魔になります。だから、これをつぶしてしまい、郵貯・簡保の三百四十兆円を、自分たちのもうけ口にしよう。これが日本とアメリカの大手銀行筋の要求なのです。この号令にしたがって、ことがすすんでいるというのが、ことの真相なのです。

 それは、郵政民営化法案をつくるさいに、日米政府の担当者が十八回も秘密会合を重ね、アメリカの銀行や保険会社の要求をみんな受け入れて、この法案をつくったことにもしめされています。

 みなさん、日米の大銀行・保険会社の手先になって、これを何が何でもすすめるというのは、国民にとって「百害あって一利なし」です(拍手)。首相が、「選挙で国民に問う」というなら、こんなひどい法律は、二度ともちだせないように、とどめの審判をくだそうではありませんか。(拍手)

■「改革」の名での「強きをたすけ、弱きをくじく」政治を許していいのか

 もう一つ問題があります。小泉首相は、郵政事業の民営化は「改革の本丸だ」といっています。自民党のキャッチフレーズは「改革を止めるな」だそうです。首相が「本丸」という郵政民営化がどんなにひどいものかということはいまお話ししましたが、それでは小泉首相のすすめてきた「改革」とは何なのか。首相は、「いま痛みに耐えれば、明日はよくなる」。こういって痛みを押しつけました。その結果何がおこったか。この四年間、「改革」の名ですすめられてきたものを、一つひとつ思い出していただきたいと思うのです。

 まず、社会保障の連続切り捨てです。お年寄りとサラリーマンの医療費の値上げが強行されました。年金の大改悪の法律を押し通しました。今度の国会では介護保険制度まで悪くしました。特養ホームに入っていらっしゃるお年寄りの方々から、「ホテルコスト」と称して食費と居住費を全額自己負担として、取り立てるというのです。払えないものは出て行けといわんばかりの冷酷無情なやり方であります。

 働くみなさんの雇用はどうなったでしょう。財界の「リストラ」を応援する政治のために、正社員がどんどん減らされて、パート、アルバイト、派遣労働など、不安定な働き方を押しつけられる非正規社員が増えています。すでに働く方の32%が非正規社員です。若い方は48%にも達します。二人に一人はアルバイトやパートなど不安定な働き方をさせられ、人間をモノのように扱い、使い捨てる、ひどい状態がまかり通っている。雇用が不安定になるとともに、賃金も毎年さがりつづけています。家計の所得は、小泉内閣の四年間で十二兆円も減りました。

 中小企業はどうでしょう。最近、『週刊ダイヤモンド』という経済誌で、たいへん胸の痛む話が特集されていました。中小企業の経営者の方々で、年間の自殺者が四千人を超えるというのです。六年連続つづいている。「中小企業の経営者が追い詰められている」とこの特集では告発していました。

 小泉首相が手始めにやったことは、「不良債権処理」の名で中小企業を切り捨てる政治でした。たしかにこれをやったおかげで、大銀行の帳簿はきれいになったかもしれません。しかし中小企業のみなさんの実態はたいへんです。大手銀行は何をやったか。資金繰りで苦しんでいらっしゃる中小業者を、債権回収会社に売り渡しました。債権回収会社は大銀行よりもっと過酷な取り立てをやっている。そういうもとで四千人もの方が命を落としている。

 「改革」の名でやられたことは、どれをとっても「強きをたすけ、弱きをくじく」という政治ではないでしょうか。その結果、「勝ち組」「負け組」という言葉がはやりました。日本を殺伐たる弱肉強食の社会にしてしまった。財界・大企業だけは空前のもうけをあげているが、庶民にとっては、一つ痛みに耐えれば、つぎにもっと大きな痛みがくる、そしてその先にみえてきたのは、庶民大増税の計画であります。「痛みに耐えても明日はない」ということがはっきりしたのが、小泉内閣の四年間だったのではないでしょうか。(拍手)

■最初からきっぱり対決をつらぬいてきた日本共産党をのばしてこそ

 この「構造改革」の名による国民いじめの政治に、民主党はどういう態度をとったか。小泉政権が発足した直後の党首討論で、当時の民主党の代表がいった言葉を思い出します。「小泉さんの改革の背中を押してさしあげる。もし小泉さんが志半ばで倒れたら、骨をひろってあげます」。ここまでいって「構造改革」を競い合ったのが民主党でした。

 私たち日本共産党は、この小泉「改革」なるものが始められた最初のときから、「こんなものは『改革』でも何でもない。国民いじめの政治をもっとひどくしたものだ」と、その正体を見抜いて、これにきっぱり反対する論陣をはってまいりました。どうかみなさん、今度の選挙を、「構造改革」の名による国民いじめの政治をやめさせる、そして人間が人間として大切にされる政治に切りかえていく選挙にしていこうではありませんか。どうか日本共産党をよろしくお願いいたします。(大きな拍手)


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