2005年8月13日(土)「しんぶん赤旗」
小泉内閣は“踊り場脱却”というが
家計の痛み回復せず
4―6月期GDP
「(景気は)踊り場脱却との(政府の)判断に沿った内容だ」―竹中平蔵経済財政担当相は十二日、同日発表の二〇〇五年四―六月期国内総生産(GDP)速報で、かろうじて三期連続のプラス成長になったことを受け、小泉「改革」の成果を誇ってみせました。しかし、小泉内閣のもと、痛みにつぐ痛みを受け続けた多くの国民の実感とはかけ離れた「プラス成長」です。(山田英明)
「景気回復? まるっきり実感なんてないよ。仕事はピークの三割減。給料だって以前より下がってるしさ」。同日、東京・新宿駅前のベンチで昼食を食べていた男性(54)=運送業者の契約社員=は語りました。
■一部大企業回復したが
たしかに、一部大企業の景況感は回復しています。日本経済新聞社のまとめによると、上場企業の〇五年四―六月期の連結業績は、経常利益が前年同期と比べ7・6%増の五兆六千億円強(「日経」十二日付)。
トヨタ自動車は三月期の連結決算で、一兆一千七百十二億円の純利益を計上。二期連続で一兆円を超す最終利益をあげました。一日当たり三十二億円も稼いでいる計算です。
政府は、こうした一部大企業の好調さが「家計部門に波及しており、景気回復が続く」(八月の月例経済報告)との見通しを示しています。
■痛みの連続家計は低迷
しかし、家計への波及は限られ、逆に低迷を招いています。長引く不況の下、一部大企業の空前の利益は売り上げ増によってもたらされたものではありません。労働者の賃金抑制と下請け単価の切り下げなど、リストラ・「合理化」によってもたらされたものだからです。それを応援したのが、小泉「構造改革」でした。
大企業の好調さを背景に一部の労働者はボーナス(一時金)の増加などが見られた一方、パートや派遣労働者が急増。低賃金で働かされる労働者が増えました。
収入が安定していなければ、個人消費に火はつきません。直近の全世帯家計調査(六月)では、一世帯あたりの消費支出は、三カ月連続で前年を下回りました。
GDP統計で、個人消費が一見持ち直しているかのように見える一因には、小泉「改革」による「痛み」が支出を押し上げていることがあります。
医療改悪、年金改悪、介護保険改悪…。
小泉内閣は、これまでに国民に連続的に負担増を押しつけてきました。家計調査をみても、医療や介護のための費用、子どもの教育費などが増加してきました。家計にとって「やむを得ない」支出が増加している点が特徴的です。
■負担増競う自公と民主
小泉内閣は、所得税や消費税の大増税、高齢者の医療費自己負担増などをたくらんでいます。
一方、民主党も、年金目的として消費税増税を主張。配偶者控除の廃止や扶養控除の廃止など、所得税増税も打ち出しています。
大負担増の競い合いでは、景気にいっそうの大打撃を与えることになります。家計を直接応援する政治への転換こそ求められています。
■これが小泉「改革」
■大企業だけ大もうけのカラクリ
「景気が悪くても良くても、大企業はひたすらもうけられる。そうした条件をつくりだしたのが小泉『構造改革』だった」というのは「暮らしと経済研究室」主宰の山家悠紀夫さん(前神戸大学教授、元第一勧銀総研専務理事)。
山家さんの試算によると、二〇〇四年度と小泉内閣発足(〇一年四月)直前の二〇〇〇年度を比べると、家計部門の所得は十八兆円減少(雇用者報酬十二兆円減、財産所得六兆円減)する一方、企業部門の所得は十二兆円増えています。国民所得が全体で約六兆円減るなかで、家計部門から企業部門に所得が大幅に移転しています。
大企業のリストラを応援し、労働規制をいっそう緩和することなどによって、正社員を減らし、非正規社員を増やし人件費を抑えることで、大企業が高収益をあげる環境をつくる―小泉「改革」のもとで、トヨタ自動車などが空前の大もうけをしても、庶民は「景気回復」を実感できないカラクリがここにあると山家さんは指摘します。