2005年7月19日(火)「しんぶん赤旗」

進む東アジア共同体論議

問われる日本の自主性


 将来の東アジア共同体への関心が高まっているのに伴い、日本の関与をめぐってもさまざまな議論が行われています。

■「通商白書」も

グラフ

 二〇〇五年版「通商白書」は、東アジアでの産業内分業ネットワークや三角貿易構造(日本↓東アジア↓欧米)の進展などを根拠に、「活力ある日本の未来像を実現していくためには、東アジアとの経済関係の深化が不可欠」と結論づけ、「東アジア共同体構想」に積極的に言及しました。

 今年末には、東アジア共同体を話し合う初の東アジア首脳会議がマレーシアで開かれます。今月末のビエンチャンでの東南アジア諸国連合(ASEAN)外相会議でも、論議になります。

 東アジア諸国は、一九九七年七月に始まったアジア経済危機を経て急速に協力を強めました。米国主導のアジア太平洋経済協力会議(APEC)が危機に即応できなかった一方、ASEANと日本、中国、韓国(ASEAN+3)の地域協力が危機対策に役立った経験が、大きな弾みをつくりだしたのです。

 米国やAPECへの失望が広がり、「ASEANや東アジアといった、より地域的な協力への志向が強まっている」(ASEAN外交筋)と指摘されています。より自立した「東アジアのための東アジア」への志向が強まっているといえます。

 東アジア共同体の構成については見解はさまざまです。しかし、当面の東アジア首脳会議では、ASEANと日中韓は六月、ASEAN+3にインドを加えることで合意。日本はオーストラリアとニュージーランドも加えたい意向で、両国も参加を望んでいますが、今後の協議次第です。

■対米と歴史問題

 東アジア共同体の議論が進むなかで、日本には大きな役割が期待されていいはずですが、対米追随姿勢や歴史問題などのために、かえって真意が問われています。

 ライス米国務長官は三月、東京都内の大学での講演で「アジア太平洋共同体」を強調し、「閉鎖的な社会や経済、勢力圏でなく、開かれた世界を支持する」と述べて、米国抜きの東アジア共同体に反対の意向を表明。アーミテージ前国務副長官にいたっては、「東アジア共同体構想に私は反対だ。米国がアジアで歓迎されていないと主張しているのとほとんど変わりない」(「朝日」五月一日付)と猛反発です。

 「日米関係と対立、矛盾するものであれば、よほど慎重に考えなくてはいけない」(谷内正太郎外務事務次官)とする日本政府は、米国のオブザーバー参加を提案するなど、他の諸国から「APECのようになってしまう」と批判されています。

 過去の侵略戦争を肯定する靖国神社への小泉純一郎首相の参拝は、中国や韓国との関係を傷つけています。財界からさえ、「個人的には参拝をやめていただきたいと思っている」(小林陽太郎富士ゼロックス会長)、「日中の相互理解にとって、首相の靖国参拝は妨げになってきている」(北城恪太郎経済同友会代表幹事)などの声があがっています。

 日本経団連が〇三年一月に発表した「活力と魅力溢(あふ)れる日本をめざして」は、「東アジアに自由経済圏が形成されないまま、域内各国が欧米等との(自由貿易)協定の締結を進めれば」、「欧米等の企業に対し劣位に立たされる」として、「最大の経済規模を有する日本のイニシアティブ」による「東アジア自由経済圏構想」の推進を主張しています。

 同時に、「日本がリーダーシップを取るには軍事力充実が必要ではないか」(奥田碩日本経団連会長)という発想も根強く、「必ずしも軍事的な手段で役割を強化する必要はない」(ASEAN外交筋)といった反発は必至です。

 東アジア共同体は将来の課題ですが、東アジアが統合をより強める必要があるとする意見は、大勢を占めています。日本は、対米追随を排した自主的な立場で、信頼される平等なアジアの一員として、東アジア共同体構想に臨むのかどうかが、問われています。(北川俊文)


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