2005年7月8日(金)「しんぶん赤旗」

障害者「自立支援」法案

作業所で働く施設入所者

収入を超える大幅負担増に


 障害者の働く場、社会参加の場として重要な役割を果たしている小規模作業所や通所授産施設。障害者「自立支援」法案は、ここで働く障害者にも大きな影響を与えます。日本共産党の山口富男議員は六日の衆院厚生労働委員会で、グループホームで生活しながら作業所に通う障害者の負担増問題を取り上げました。

■実例示し追及

 グループホームで生活しながら作業所に通っている障害者の場合、両方の施設で負担増のダブルパンチを受けます。

 東京都内の四カ所の作業所を訪問し、そこで働く障害者や職員と懇談した山口氏。「工賃(作業所の給料)は七千―八千円台。共通して出されたのは、せっかく就労に向けた作業をしているというのに、収入を超える負担がかかるようになる。これがどうして障害者の自立支援になるのかという意見だ」と力を込めました。

 山口氏は、実例を示して追及しました。滋賀県大津市のグループホームで生活し、作業所に通っているAさんの例を施設が試算したものです。

 Aさんの一カ月の収入は、障害基礎年金(一級)が八万二千七百円、工賃が一万七千六百円で、合わせて十万三百円です。一方、グループホームの入居料と交通費を合わせると現行の支出は六万五千二百円になります。

 これが「自立支援」法案でどうなるのか。グループホームと作業所の利用料二万四千六百円、食費一万四千三百円が新たにかかってきます。月に三万八千九百円もの負担増です。支出は十万四千百円に増え、収入を超えてしまいます。

 厚労省の塩田幸雄障害保健福祉部長は「グループホームから授産施設に通っているケースは、食費の負担と定率負担がダブルにかかる」と重い負担増になることを認め、個別の減免制度を提案していると弁解しました。

■低い軽減基準

 大幅負担増によって年金や工賃などの収入を超えるような場合、個別に減免する軽減制度(個別減免)をつくるから大丈夫というのが厚労省の言い分です。これにたいし山口氏は、厚労省が障害者に不利となる個別減免にするため、法案提出時の説明をあとから百八十度変えていたことを明らかにしました。

 施設入所者の個別減免(三年の経過措置)は、月六万六千円に一割負担(低所得者だと上限額の一万五千円)を加えた金額を「費用基準」とし、障害者本人の収入(年金、工賃など)がこれを下回る場合、費用基準と収入の差額分を減免するものです。

 この六万六千円の根拠は何か。山口氏は追及しました。

 厚労省の法案提出時の説明(二月の全国担当課長会議)は、障害者が生活で支出するもの。具体的には、六万六千円の内訳は食費二万二千円、居住費二万三千円、その他生活費二万一千円。これから、家計調査等を踏まえて検討するものだと説明していました。一月、四月に開催の社会保障審議会でも学識経験者・障害者団体代表の委員に同様に示していました。

 ところが六月の説明(全国担当課長会議)でこれを撤回。「障害基礎年金二級(月約六万六千円)」の収入を根拠にしたのです。支出から収入へ百八十度違う説明に乗り換えたのです。

 「どちらが法案の本当の説明だ」と迫る山口氏。あとの説明と答弁する塩田障害保健福祉部長。「いろんなケースに対応できる算定方式ということで検討中」と弁解しました。

 支出を費用基準とすると、厚労省が示した数字は過小に見積もっていました。実際の家計調査(二〇〇四年、総務省統計局)では、年収百万円未満の単身世帯の「その他」生活費が月四万七千円です。グループホーム学会の緊急調査(四月)は、入居者の「医療費、交通費、電話代」などは月四万―五万円でした。厚労省の見込んだ二万一千円の倍以上にもなります。

 山口氏は「八万円、九万円で(支出が確保できるような)きちんとした軽減措置にしないと生の生活に食い込んでくる仕組みになるではないか」とのべ、障害者の生活実態を見ようとしない厚労省をきびしく批判。「障害者の生活実態から必要なのは応益負担の導入ではなく、所得保障だ」とのべ、自民党議員からも拍手が起きました。


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