2005年7月5日(火)「しんぶん赤旗」

主張

サマータイム

ゆとりある生活にはほど遠い


 日照時間の長い季節に時計の針を一時間早めるサマータイム(夏時間)制を導入する法案を、今国会に提出する動きがあります。「ゆとりの創造」「エネルギーの節約効果がある」といいますが、本当にそれが実現するのか、はなはだ疑問です。

■働く時間が長くなる

 サマータイム制は、戦後の米占領下で一九四八年から実施されましたが、国民の過半数が反対し、五二年廃止された経過があります。一九九五年と九九年にも、法案提出の動きがあり、今回で三度目です。

 財界と労組の一部など推進派は、七十カ国以上で導入されており、仕事後の夕方の時間が増え「ゆとりと豊かさを実感できる」といいます。

 しかし、サマータイムを導入する外国と日本では前提条件が違います。欧州諸国は労働時間が短く、残業は少なく、家族で夕食をとるのが常識。日本は一般労働者で年間二千三十三時間も働き、不払い残業も横行しています。一時間早く出勤しても、明るい時間に帰宅しづらい雰囲気があります。通勤時間も長く、早く帰宅できる保障はありません。

 「成果」を追求され深夜まで働くような職場環境が変わらなければ、労働時間が伸びる恐れがあります。

 実際に、昨年実験的に導入した札幌市の従業員アンケートでは、二十、三十歳代の男性の31%が労働時間は「増加した」と答えています。

 いま政府は年千八百時間の時短目標も廃止するとし、ゆとりある生活に逆行する方向を歩んでいます。長すぎる残業の削減と不払い残業根絶、取得率47%に低下した年次有給休暇の完全取得が「ゆとりと豊かさ」の実現に先決です。

 日照時間を活用すれば電力の削減になるという省エネ効果にも疑問があります。推進団体の「生活構造改革フォーラム」は、省エネ効果は原油換算で九十三万キロリットルと試算しています。しかし、余暇時間を買い物やレジャーなどにあてればその分野の電力、エネルギー消費は増えます。

 推進派の九八年の試算は、余暇需要拡大でエネルギー消費が三十七万キロリットル増えるとみて、省エネ効果は五十万キロリットルとしていました。今回は増エネ効果を考慮しません。

 制度の導入には各種の機器類の改修が必要です。導入コストは一千億円といわれますが、これも検討していません。省エネ効果を過大に見た試算の印象を免れません。

 照明電力を減らすには、大手スーパーやコンビニの深夜営業や二十四時間営業、生産現場の二十四時間操業などのあり方を見直せば、その効果は抜群です。

 明るい時間に車が走れば、交通事故が年間一万件ほど減少するとも試算しています。余暇が増えれば交通量も増え事故が増加する面もあり、どれほど減少するのかは疑問です。

 交通事故はこの十年間、全国で年六十九万件から九十万件に三割増えました。その背景の一つに規制緩和によるトラックやタクシーの大幅増加があります。無謀な規制緩和を見直せば、交通事故の減少と省エネ効果の一石二鳥ではないでしょうか。

■国民的な合意が必要

 サマータイムには、国民の間で「労働時間が長くなる」「体内時計が狂う」など根強い抵抗感があります。「朝日」のアンケート調査でも導入賛成が31%、反対が49%です。

 この制度は国民の生活スタイルに直接大きな影響を与えるだけに、国民的な議論が必要です。拙速に法案提出を急ぐのではなく、国民的な合意をつくすことが求められます。


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