2005年6月29日(水)「しんぶん赤旗」

主張

米でBSE牛

「安全」いうには検査不十分


 米国でBSE(牛海綿状脳症)感染牛が新たに確認されました。

 一昨年十二月に初の感染牛が発見されたのを受けて、米国が、へたり牛や死亡牛などリスク(危険性)の高い牛に限って、BSE検査の頭数を増やしました。それでも食肉処理される牛の1%未満にすぎず、検査方法も不十分です。

 今回、BSEが確認された牛は、昨年十一月に確認検査(二次検査)で陰性とされたものを、米国では通常実施していない感度の高い検査方法(ウエスタンブロット法)で再検査し陽性と判断されたものです。

 ■米国のBSE汚染度は

 政府は、米国産牛肉の輸入再開をめざし、内閣府の食品安全委員会に日米の牛肉の安全性の比較を諮問しています。米国産牛肉については、病原体が蓄積する危険部位を除去した二十カ月齢以下の牛を対象としています。

 しかし、同委員会のプリオン専門調査会では、米国でのBSE汚染度がはっきりしないままでは比べられないとして、二十カ月齢以下の牛だけでなく、国全体の感染、汚染の状況を検討する方針です。

 日米の牛肉の安全性を比較するというなら、米国でも日本と同レベルのBSE検査を行ってデータをとらなければ、そもそも比べようもありません。

 もともと、米国でBSEが発生した直後の、国際調査団の報告書は、“BSEが米国にまん延している可能性”を指摘していました。

 米国で初確認された半年前(二〇〇三年五月)にカナダでもBSEが初めて確認されており、北米全体に広がっている恐れを否定できないからです。

 米国は、米加の二つのケースが“局限した流行”だとして広がりを否定しました。ところが、カナダでは今年一月に二例目、三例目のBSE感染牛が確認されています。

 もし、米国でも、ウエスタンブロット法による検査を採用していれば、昨年十一月に二例目のBSE感染が確認されていたはずであり、北米全体の広がりにたいする警戒感へとつながっていたはずです。

 米国にたいして、国際調査団は、リスク牛のほか、「健康牛」の抽出検査も勧告しています。勧告は全頭検査を否定するなど問題を含んでいますが、米政府は、抽出検査すら“健康牛でBSEが発見されることがまずない”と拒否しています。

 健康と見られる牛でも、BSE感染が発見されることは日本で試されずみです。二十頭のBSE感染牛のうち、死亡牛でもなく起立障害などの症状も無い牛は九頭もあります。また感染牛のすべてがBSEを疑う臨床症状を示していません。

 米国では、健康な牛が99%以上を占めています。高リスク牛に限った抽出検査は、〇二―〇三年度でわずか年約二万頭であり、〇四年度に増やしたとはいえ約三十万頭です。約四千五百万頭もいる三十カ月以上の牛のごくわずかしかカバーすることができません。これでは米国でのBSE汚染状況を把握できません。

 ■飼料汚染の危険も

 米国は、飼料規制で、汚染源である牛の肉骨粉を牛に与えない措置を一九九七年からとっているものの、豚や鶏のえさとしては禁止していません。えさの製造工場や流通経路、保管場所などで牛の飼料に牛の肉骨粉が混入する交差汚染の危険性が残ったままです。これらの影響をはかるためにもBSE検査の強化が必要です。


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