2005年6月4日(土)「しんぶん赤旗」

郵政民営化

米と全銀協が要求

「国民望まぬ」 塩川議員廃案迫る


 「民営化を要求しているのは巨大銀行と米国だ」――三日の衆院郵政特別委員会で、日本共産党の塩川鉄也議員は、国民の望んでいない郵政民営化を、小泉内閣が強引に推し進めようとしている背景にある日米の金融業界の要求を指摘、同法案の廃案を迫りました。

 塩川氏は、日米の二つの文書を示しました。

 日本の金融業界の要求を示すのは、全国銀行協会が二〇〇四年七月に出した「郵政民営化に関する私どもの考え方」という冊子です。郵便貯金事業について、もはや国営で維持する理由はないとして廃止を求めています。

 さらに、米国政府の日本への規制緩和要求である「日本政府への米国政府の年次改革要望書」は二〇〇三年十月、「郵便金融機関と民間競合会社間の公正な競争確保」を名目に、郵政事業と民間への「同一ルール適用」=民営化を提言。

 政府の「基本方針」が発表された直後に出された「要望書」(二〇〇四年十月)でも、「民営化が日本経済に最大限に経済的利益をもたらすためには、意欲的かつ市場原理に基づいて行われるべきである」と郵政民営化を督促しました。

 塩川氏は、郵便貯金・簡易保険の三百四十兆円の資金を民間の銀行や保険会社に移しかえようというのがこれらの要求のねらいであり、「あなたは銀行業界と米国の要求を実行しようとしているのではないか」と追及しました。

 小泉純一郎首相は「競争を通じて国民の利便をはかろうとするのが民営化だ」とのべるにとどまり、米国、銀行業界の要求との関係については答弁を回避しました。


郵便局守れ

福祉増進に不可欠

民間金融は店舗次々閉鎖


郵便貯金法 目的

第1条 郵便貯金を簡易で確実な貯蓄の手段としてあまねく公平に利用させることによつて、国民の経済生活の安定を図り、その福祉を増進することを目的とする。

廃  止


グラフ

グラフ

 「郵便局のような『福祉の増進』を目的とした金融機関がいまこそ必要ではないのか」――三日の衆院郵政特別委員会、日本共産党の塩川鉄也議員は、国民のくらしの視点から、小泉内閣の郵政民営化がはらむ大きな問題点を明らかにしました。

家族のだれかが

 いま郵便貯金を利用している世帯は四千二百二十二万世帯。全世帯の85・7%、一家族でだれか一人は利用しているほど。年金や恩給の受け取り、家族への仕送りなど「庶民のくらしに不可欠な役割を果たしている身近な金融機関が郵便局」(塩川氏)です。塩川氏は、銀行など民間金融機関がリストラと採算優先のサービス切り捨てで店舗を次々閉鎖するなか、郵便局は現状維持をしていることをパネル(グラフ1)で示しました。なぜそうなのか――。

 郵便貯金法はその第一条で、事業の目的に「国民の経済生活の安定」「福祉の増進」をかかげています(図参照)。だからこそ、民間銀行が次々店舗を減らし、サービスを後退させるなか、局数を維持してきたのです。

 麻生太郎総務相は、「郵便貯金法の趣旨のうえに全国のネットワークがある」と答えました。

 塩川氏は「(郵政民営化は)郵便貯金法を廃止し、郵便局を普通の銀行にするというものではないか」とただしました。

 竹中平蔵郵政民営化担当相は「サービスを実態的に引き継ぐ仕組みをつくった」と抗弁しましたが、民営化によって郵便貯金法が廃止される結果、「福祉の増進」という理念そのものも投げ捨てられることが鮮明になりました。

小学校区に一局

 いま全国の郵便局の数は二万四千七百局。全国に二万五千校ある小学校のほぼ一学区ごとに一局の郵便局が置かれている計算で、「歩いていける距離にある金融機関の窓口」となっていることが特徴です。

 政府の郵政民営化法案で、郵便貯金が「郵便貯金銀行」にされてしまうのは二〇一七年。塩川氏は、日本の高齢化率(六十五歳以上が人口に占める割合)が、二〇一五年には26%に上昇すると指摘。そうした高齢化の進展のなかで、身近な金融サービスの窓口がますます必要になるときに、郵便貯金を民間まかせにする逆行ぶりを批判しました。

 小泉純一郎首相は、「いまの郵便局が全部なくならないとはいわない。統廃合もある。全部維持しろということではない」とのべ、郵便局の大幅減を押しつける考えを公然と示しました。

 塩川氏は、「郵便貯金法をなくす理由は説明していない。高齢化社会に向けて『福祉の増進』を目的とした金融機関が必要だ」と強調しました。

統廃合で激減も

 実際、郵便局数はどうなるのか―。

 民営化法案で設置基準については、「総務省令で定める」としています。しかし、「郵便局の設置基準(案)」で現在の郵便局数を維持すると明示しているのは、「特に過疎地については、現に存する郵便局ネットワークの水準を維持する」とした過疎地の七千局程度でしかありません。(グラフ2)

 麻生総務相は「いろいろな規制をつけて過疎地には特に配慮するようにしてある」とのべましたが、塩川氏の指摘には答えませんでした。

 塩川氏は、「具体的な数量的基準は示されておらず、重大な郵便局数の後退につながりかねない」と批判しました。


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