2005年5月23日(月)「しんぶん赤旗」

主張

増税シナリオ

高度「不平等社会」に歯止めを


 政府、財界が、競い合うように財政見通しの試算を発表しています。

 問題は中身です。年金、医療、介護など社会保障費をいかに抑制するか、消費税率をどれだけ引き上げるか。国民に激痛をもたらす競争になっています。

あまりに一方的な

 内閣府が一月に公表した試算は、二〇一二年度に基礎的な財政収支を黒字にする目標です。歳出削減のほか、消費税と所得税あわせて三兆円の増税を盛り込んでいます。

 経済同友会は、内閣府の想定は「構造改革への努力が不十分」であり、財政目標の「実現可能性は極めて小さい」と四月に発表した提言で指摘します。消費税は一〇年度に13%、一五年度に17%、二〇年度以降は19%に増税をと主張しています。

 経済財政諮問会議(議長・小泉首相)が四月に発表した「日本21世紀ビジョン」。消費税を数年内に「5+α%」へ増税。歳出の維持を前提とするなら、その後はさらに「10+α%」への増税が必要だ―。

 これに財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が注文を付けています。財政審部会で石弘光・専門委員(政府税調会長)が「どうもこれ楽観的に見えますね」、財界は20%近い消費税率を主張していますよと。

 こんな議論を受け、財政審は五月十六日に長期試算をまとめました。社会保障を大幅に抑制しても、一五年度には消費税率を少なくとも17%にする必要があるというものです。

 異なる試算が乱立しているのは、経済成長率や長期金利の想定に幅があることも一因です。今後の経済運営のかじ取り次第で財政の状況が大きく変わることを示しています。

 それと同時に、いずれの試算も、歳出面では公共事業のムダの一掃に背を向け、五兆円の軍事費を聖域にしています。歳入面では、どの試算も共通して、大企業と高所得者・富裕層向けの巨額減税を変えようとしません。これらの減税は、消費税の増税を強行した一九九七年以降、五兆円以上にのぼります。

 もっぱら、福祉の削減、消費税の増税、所得税の諸控除の縮減など、社会的弱者と庶民への給付減・負担増で乗り切ろうという計画です。

 これは、あまりにも一方的なシナリオです。大企業・財界や高所得者・富裕層の利益にひたすら奉仕する路線です。

 「勝ち組」「負け組」などという嫌な言葉が使われるのは、日本でも経済的な格差が広がっている反映です。OECD(経済協力開発機構)は加盟二十七カ国の経済格差を分析し、二月に報告書をまとめました。

日本の貧困率は高い

 それによると、日本の貧困率(国民の所得中央値の半分以下しか所得がない人の割合)は15・3%に達します。メキシコ、アメリカ、トルコ、アイルランドに次いで、五番目の高さです。ドイツ(10%)をはるかに上回り、フランス(7%)の倍以上です。

 とりわけ、若者と高齢者の貧困率が高いことが特徴です。

 すでに日本は、高度に不公平化が進んだ社会になってきています。これに歯止めをかけなければ、日本はまともな社会として存続できなくなるのではないでしょうか。

 お金の使い道に困るような大企業や富裕層を減税で応援し、社会的弱者・庶民に負担増を押し付けるやり方は、不公平をますます拡大するとともに、景気の足を引っ張ります。

 無謀な大増税路線をやめさせる世論と共同を強めましょう。


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