2005年5月17日(火)「しんぶん赤旗」

JR西脱線事故 穀田議員の質問

衆院予算委

国は責任 果たしているか

02年に指摘されたのに

過密ダイヤを放置


 「安全まで民営化し、規制緩和して国の責任を放棄してきた結果が、利益第一主義を許して今回の事故につながった」―JR西日本福知山線脱線事故を取りあげた十六日の衆院予算委員会。日本共産党の穀田恵二議員は、これまでの事故で問題を指摘されながら、もうけを優先し安全対策を後回しにしてきたJR西日本と、それを許してきた政府の姿勢への痛恨の思いと怒りを込めて追及しました。


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パネルを示して質問する穀田恵二議員=16日、衆院予算委

 その事故は二〇〇二年四月に起きました。JR京都駅でポイント切り替えのミスなどで先行車両に異常接近したものです。

 このときの航空・鉄道事故調査委員会は、重大事故につながる兆候として警告する報告書を発表。「余裕時間がないことが事故の要因である」と指摘しました。「定時運転確保に対する強い意識が、異常時にあせりを招き、基本動作の確実な実施を阻害した可能性があった」

 JR側は、この指摘に対して「余裕のない時間設定に問題があった」と回答。是正を約束していました。

 ところが、その後におこなわれたのは“是正”どころか、さらなる過密ダイヤの編成でした。事故の一年後の〇三年十二月のダイヤ改正で、福知山線の宝塚―尼崎間では、新しい停車駅を一つ増やし、所要時間が一分以上増加したのに、所要時間を増やさず、「余裕時間」ゼロの運行が強行されたのです。

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事故現場近くの献花台には、訪れる人が後をたちません=11日、兵庫県尼崎市

 これに対し、国土交通省はどういう態度をとったか―。点検し監督・指導する責任を果たさないばかりか、このJR西日本のダイヤ改正の申請をフリーパスで通してしまっているのです。

 穀田氏はただしました。「〇二年の事故調の指摘を受けて、なぜただちに新型ATS(自動列車停止装置)の設置を義務付けなかったのか。悔やまれてならないのではないか」

 北側一雄国交相 福知山線復旧の時点で、ATS―Pの整備を条件にする。

 穀田氏 これまでにも、そうするチャンスはあった。それを怠ってきたことがこの事故につながった。

 こうした国交省の対応の大本にあるのは、政府がJRに対して安全指導を緩めてきた問題です。

 国鉄の分割民営化時(一九八七年)まであった速度制限型のATS設置を大手私鉄に義務づけた通達が廃止されました。JRへの適用を避けるためでした。

 安全規制に関する手続きも大幅に緩和されるなかで、JR各社の車両や軌道の検査・補修なども後退していきます。

 「国民の命と安全を守る、今回のような鉄道事故を起こさないための監視・監督責任はまぎれもなく政府にある。小泉首相、どうか」――穀田氏は迫りました。

 小泉首相は、先の通達を廃止したことについての政府の責任を認めました。命と安全への政府の責任――この視点から徹底した事故原因の究明と再発防止策をたてること、いまそれがなにより求められています。

もうけ増えてもATS設置費減る

図

 新型ATSの設置状況はどうなっているのか。JR西日本管内の近畿圏の主要路線の中で、設置していないのは事故の起きた福知山線だけです(図参照)。しかもその路線は、駅が一つ増えて停車のための所要時間が増えても、全体の所要時間は増やされず「余裕時間」のない過密ダイヤが組まれているのにです。

グラフ

 さらにATSの設置工事費は九八年の二十一億円から〇四年に五億円と激減。経常利益を伸ばしているのと対照的な動きです。(グラフ参照

 ここには、安全より利益を優先させるJRの経営方針が明確に示されています。

 参考人として出席したJR西日本の垣内剛社長は、なぜ福知山線の設置が後回しになったかという穀田氏の追及に、「ATS―Pは安全確保にたいへん有効な手段」と認めながら、これまで設置を怠ってきた理由は説明できませんでした。


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