2005年5月13日(金)「しんぶん赤旗」

主張

米の新核作戦指針

推測をもとに核攻撃始めるとは


 米大統領の指揮の下で戦争指導にあたる統合参謀本部が、核兵器使用作戦の新しい基本指針づくりをすすめています。「統合核兵器作戦のためのドクトリン」と称するもので、三月には草案が出ており、八月の完成を目指しています。これは、ブッシュ政権が二〇〇二年に作成した「核態勢見なおし」の核先制使用戦略の具体化です。

 核拡散防止条約(NPT)再検討会議では、多くの非核兵器国が核兵器の廃絶、先制不使用を求めています。米軍の新指針はこれを真っ向から拒否する重大な内容となっています。

「意図を持っている」と

 核兵器使用の決定権は大統領が握っています。太平洋軍などの地域統合軍の司令官が、大統領に核兵器の使用許可を要請できるのはどのような場合か。新ドクトリンは、八つの具体的事例をあげています。「敵が大量破壊兵器を使用するか使用の意図を持っている場合」「圧倒的に強力な敵の通常戦力に対抗する場合」「米国に有利な条件で戦争を急速に終結させる場合」「米軍と多国籍軍の作戦を確実に成功させようという場合」などです。

 攻撃の「意図を持っている」とみなしただけで、核兵器を使用するという方針は重大です。「意図」というのは、行動にあらわれていない段階で、相手の狙いを推測しているにすぎません。そんなことで戦争を始めたら、世界はめちゃめちゃになってしまいます。当然、国連憲章は、攻撃の「意図」があるというだけで武力攻撃することを禁止しています(第五一条)。

 ブッシュ政権は、フセイン政権の大量破壊兵器保有というウソの口実でイラク戦争を始めました。アメリカが攻撃されたわけでもないのに、危険な「意図」を持っているとして先制攻撃することは、侵略戦争そのものです。だからこそ、アメリカの同盟国をふくむ多くの国々がイラク攻撃に反対しました。

 しかし、ブッシュ政権は先制攻撃戦争を国家方針としています。新ドクトリンを完成すれば、イラク戦争のような例を含め、核兵器を先制的に使用する危険が、さらに大きくなります。

 新ドクトリンが、多国籍軍の作戦を確実に成功させるために核兵器を先制使用するとしていることは、日本を“共犯者”にする可能性をもちます。小泉政権が、イラク戦争で米軍を中心とした多国籍軍に参加し、こんご、世界のどこであれアメリカの先制攻撃戦争に参戦していくことを方針にしているからです。日本が支援している米軍が、一方的に核兵器を使用すれば、広島・長崎の筆舌につくせない原爆被害の再来となります。自衛隊が武力行使をするかどうかにかかわらず、海外での日米共同作戦は常に核兵器の使用を前提にしたものとならざるをえません。

 ブッシュ政権の核先制使用方針に反対することは、世界の平和と安全にとって重要な課題です。

核兵器廃絶が緊要

 「統合核作戦のためのドクトリン」づくりは、ブッシュ政権が先制核使用政策を系統的に追求している実態を明らかにしました。二〇〇〇年の核兵器廃絶の「明確な約束」をほごにし、小型核兵器の研究・開発を強引にすすめるのは、核使用を先制攻撃戦略の中軸にすえ、現実の戦争のなかで機能させるためです。

 核先制使用禁止の保証は核兵器廃絶です。核兵器廃絶の世論と運動を世界に大きく広げましょう。


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