2005年5月10日(火)「しんぶん赤旗」

米軍施設に「思いやり」 税金2兆円

作戦関連、住宅も

寝室が4つ


 日本政府が在日米軍への「思いやり予算」で建設してきた施設が、一九七九年度の開始以来、一万二千七百四十七件、総額約二兆円に達しています(日本共産党の赤嶺政賢議員の調べ)。地球規模で展開する米軍の作戦を支える施設から、米兵のための豪華家族住宅まで、日本国民の税金を注ぎ込んできた実態の一端をみました。


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米海兵隊基地・キャンプ瑞慶覧にある家族住宅=沖縄県北中城村

 一階に居間、食堂、台所、家族室(多目的スペース)、二階には寝室が四つ、浴室、シャワー室…。「思いやり予算」でつくられる米兵用低層家族住宅(四寝室タイプ)の標準間取り(図)です。

日本住宅の3倍の広さ

 家族住宅は最も建設数が多く、一万一千二百八十三戸建設されてきました。総予算は五千三百九十二億円です。

 冒頭の低層四寝室タイプで、延べ床面積は百五十七平方メートル。日本の公営住宅の平均面積五十一・五六平方メートル(総務省調べ、〇三年)の三倍にもなります。最も狭いタイプ(高層二寝室タイプ)でも百一平方メートルと、二倍の広さです。

 米軍の要望に応え、特別に建設している司令官用の家族住宅(四寝室)にいたっては、二百三十四平方メートルで、日本の公営住宅の四倍以上。居間だけで、五十四平方メートル=三十三畳大もあります。

 このほかにも、運動施設、学校、育児所、銀行、病院、郵便局、ガソリンスタンド、ショッピングセンター、劇場など、いたれりつくせりです。日本の憲法では宗教施設への公金支出が禁じられているのに、教会も建設。アルコール中毒患者のための更生施設や、軽犯罪者用の矯正施設もつくってきました。

 野球場や体育館などの運動施設は「(米兵の)体力向上」(防衛施設庁)を目的に建設され、四十九カ所(三百二十二億円)にのぼります。

 中身も豪華です。佐世保基地(長崎県)に建設中の体育館は、約七千平方メートル。ワールドカップ・バレーボールなどの国際大会も開かれる国立代々木競技場の第一体育館(六千百四十九平方メートル)を超える規模です。

 岩国基地(山口県)で設計を進めている多目的運動施設は、バレーコート二面、バスケットコート一面、グラウンド一面を完備。キャンプ瑞慶覧(ずけらん:沖縄県)では、五十メートル八コースの屋外プールの改築や、球技場としてサッカー場一面、ソフトボール場三面、陸上競技場としてトラック一面を建設する予定です。

 米兵家族のための学校も、三十五校(四百三十億円)を建設。一クラスあたりの生徒数は、「米軍の基準があり、二十人から二十五人ぐらい」(防衛施設庁)です。

司令部棟や滑走路拡張

 米軍機の耐爆シェルター、滑走路、工場、倉庫、訓練施設など、米軍の作戦を支援する施設建設も進めてきました。

 イラクに出撃し、ファルージャの住民虐殺作戦に参加した沖縄の米海兵隊部隊のために、司令部棟も建設しています(キャンプ・ハンセン、キャンプ・シュワブ)。

 横須賀基地(神奈川県)では、原子力空母の配備をにらみ、十二号バース(ふ頭)を延伸。佐世保基地では、イラクに沖縄の海兵隊部隊を運んだ揚陸艦用の新岸壁を建設しています。

 在日米軍再編で、夜間離着陸訓練(NLP)の移転が検討されている岩国基地では、沖合に新たな滑走路を建設する拡張工事が進行中。すでに千七百三十三億円をつぎ込んでいます。

表:「思いやり予算」基地別額上位20位

 「思いやり予算」 「思いやり予算」は、基地そのものの提供を除き、在日米軍の維持経費は米側が負担すると定めた日米地位協定にも違反するものです。

グラフ:「思いやり予算」の推移

 米軍の要求に応え、1978年度に基地従業員の労務費を日本が肩がわりしたのが始まり。同年に金丸信防衛庁長官(当時)が「思いやりの精神で米軍駐留費の分担増に応じる」とのべ、「思いやり予算」という呼称が定着しました。

 79年度から施設建設費、91年度から光熱水料、96年度から夜間離着陸訓練(NLP)の移転と、負担はエスカレート。総計すると、4兆7128億円にも達しています。

 これとは別に、96年の日米合意・沖縄に関する特別行動委員会(SACO)最終報告にもとづき、沖縄の米軍基地を県内「移設」したり、訓練を本土移転するための費用も負担(1997―2005年度で総額1553億円)しています。

 これだけの負担は、米国の同盟国の中でダントツの1位。米国防総省が発表した「共同防衛に対する同盟国の貢献度報告」(2003年7月)によると、「思いやり予算」に相当する「直接支援」額は、韓国の8倍、ドイツの421倍。同盟国のすべて(日本を除く24カ国)を合わせた額の約5倍にもなります。


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