2005年4月29日(金)「しんぶん赤旗」

'05 東京都議選

石原都政、福祉削りながら

首都高速 品川線に1250億円

公団事業の半分 直轄で


 都民には「財政が大変」といって福祉を次々に削りながら、本来、東京都が負担する必要のない首都高・中央環状品川線建設に千二百五十億円もつぎ込む――。石原慎太郎都知事と自民、公明、民主などの「オール与党」のもとで、こんな理不尽がまかり通っています。

 (中村圭吾)


軟弱な地盤の工事建設費膨れる恐れ

図

 品川線は首都高速道路公団が整備すべきものですが、都は総事業費四千億円の半分を直轄事業として整備するとしています。都の税金投入額は、首都高公団が実施する従来方式に比べ、七百五十億円も増加し、千二百五十億円に膨らみました(図参照)。都は、今年度予算に二十六億円を盛りこみ、換気塔用地買収などに乗り出しています。

 しかも、品川線は地下トンネル方式で、地盤の軟弱な目黒川の地下に建設する計画です。このため、マスコミ関係者からも「都が建設費の半額をもつというのには首をかしげざるをえない。この延伸部分が通る山手通りの大部分は、目黒川沿いの低地で地盤が悪い。そこでの地下工事だから、建設費の膨張が予想される」(『都政研究』二月号)と懸念の声があがっています。

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当初計画から事業費が2倍に膨れた首都高中央環状新宿線の工事現場

 中央環状線は建設費が高く、採算性の面からも疑問が出されていました。二年前に開通した王子線(板橋区―足立区江北約七キロ)では建設費が当初計画の千四百億円から四千百三十億円に三倍化。現在建設中の新宿線(板橋区熊野町―目黒区青葉台の約十一キロ)も、やはり当初計画の五千二百億円から一兆二百四十億円に倍加し、一メートルつくるのに一億円以上かかる“高額道路”となっています。

 これほど問題が指摘されているのに、都の税金投入額を増やしてまで、なぜ建設を急ぐのか――。

 事業主体の首都高速道路公団は、道路四公団民営化により、今秋には新会社に移行します。計画を継続するかどうかは、事業を引き継ぐ新会社の判断に委ねられており、事業に着手するのは、早くても二〇〇六年度の見込みです。

 こうしたなか、石原知事は「新会社が誕生する秋まで待っていたら、事業ができなくなる」と言って乗り出しているのです。

自民は「英断」民主は「前進」公明は「整備を」

 こんな無駄遣いを推進しているのが、自民党、公明党、民主党の各党です。

 自民党は代表質問(三月一日)で、品川線への税金投入を石原知事の「英断」だとほめちぎり、「早期完成に向けた知事の決意を」と迫りました(比留間敏夫都議)。民主党も「中央環状線の全線開通に向け、前進したことは私たちも評価する」と述べました(名取憲彦都議)。

 公明党は予算特別委員会で「東京の都市基盤整備が遅れている。環状道路や空港整備を進め、国際的な都市間競争にも対等に伍(ご)していかないといけない」と発言(三月十一日、中嶋義雄都議)。公共投資の必要性や三環状道路の整備効果を財務局に延々と語らせました。


都民の意見反映を

共産党

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都議会予算特別委員会しめくくり総括質疑で質問する吉田信夫都議=3月25日、都議会

 「白地手形を気前よく発行するのと同じ状況になりかねない」。都議会で問題の本質を正面から取り上げて追及したのは、日本共産党だけでした。

 予算特別委員会の締めくくり総括質疑(三月二十五日)で、吉田信夫都議は、都の負担が従来方式よりも膨れ上がるだけでなく、「際限なく都の負担が増える可能性が強い」とのべ、せめて公団が新会社化されるまで計画を見合わせ、都民の意見を聞くべきだと追及しました。

 そのうえで、都の負担が増える七百五十億円あれば、都営住宅二千五百戸、特別養護老人ホーム五十施設、認可保育所八十園が建設できると述べ、見直しを求めました。

 この質問を傍聴した杉並区の斉藤妙子さんはいいます。「新方式まで導入して都の負担を膨れ上がらせるやり方は、異常です。くらしや福祉の予算を削る石原都政に、無駄遣いを改めようと迫る共産党議員の姿を頼もしく感じました」


カット

 中央環状品川線 東京都江戸川区葛西から品川区の大井JCTに至る首都高中央環状線(総延長約四十六キロ)の最終区間。中央環状線はすでに二十六キロが完成し、新宿線(約十一キロ)も二〇〇六年度に完成の予定。品川線は、目黒区青葉台四丁目から品川区八潮三丁目を結ぶ延長約九・四キロの区間で、山手通り(都道環状6号線)や目黒川(二級河川)の地下に建設します。換気塔を目黒区一カ所、品川区三カ所に設置する計画。


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