2005年4月28日(木)「しんぶん赤旗」

米軍再編のなか、きょう

日米安保53周年


 鋭い眼光で威嚇する憲兵、張り巡らされた鉄条網と監視カメラ、「立ち入り禁止 日本国法律により罰せられる」と書かれた看板…。外側から垣間見ることのできる在日米軍基地の風景です。「米軍再編」で揺れる中、この風景の出発点であるサンフランシスコ条約・旧日米安保条約発効から二十八日で五十三年目を迎えます。(竹下岳)

図

占領の継続 「異常」と元自衛隊幹部

 「戦後六十年も外国軍隊がいることは異常なことなんだ」。自衛隊元幹部がこう明かします。

 日本には、主権の及ばない米軍基地がいまだ八十八カ所(総面積三万一千二百十九ヘクタール)あり、米兵五万八千人(米海軍第七艦隊含む)が駐留しています。「米国が海外に(部隊を)派遣している国の中ではイラクを除いては一番多い数」(在日米軍司令部)です。

 首都圏に広大な基地があり、人口密集地で米軍機が爆音公害をもたらしているのは世界でも例のない事態です。沖縄では本島の約二割の面積を米軍基地が占め、昨年のヘリ墜落など事件・事故が絶えません。

 サンフランシスコ条約は、米軍が住民から土地を取り上げ強大な軍事基地の島にした沖縄を日本本土と分離。本土にも外国軍の駐留を認めました。さらに旧安保条約で米軍が占領中につくった基地を確保し、自由使用を可能にしたのです。まさに占領の継続です。

 米軍に基地として提供する地域を限定しない「全土基地方式」と呼ばれるもので、これは現行の安保条約にも引き継がれています。

共同基地化 25年で7倍近くに増加

 自衛隊基地の米軍基地化も進みました。

 日米地位協定二条4項bに基づいて米軍が使用する自衛隊などの基地は一九八〇年には七カ所(総面積一万四千八百七十四ヘクタール)でしたが、二〇〇五年には四十七カ所(同六万九千九百十七ヘクタール)に増加。米軍基地と合わせれば全部で百三十五カ所にのぼります。

 沖縄の海兵砲兵部隊による155ミリりゅう弾砲実弾演習の移転先となった陸上自衛隊の東富士・北富士(静岡、山梨)、矢臼別(北海道)、王城寺原(宮城)、日出生台(大分)の各演習場では、宿舎など米軍専用施設も建設されています。

米戦略拠点 日米同盟の侵略的強化

表

 米国はソ連崩壊後、欧州の米兵数を劇的に減らしました。現在進めている米軍再編ではさらに、約四万人の部隊を米本国に引き揚げる方針です。

 ところが日本では、ソ連崩壊後も兵力数を基本的に維持した上、(1)米軍と自衛隊のいっそうの一体化(2)米軍基地の司令部機能、機動性の強化―が進められようとしています。

 イラク戦争のような米国の先制攻撃の戦争に米軍と自衛隊が共同で世界のどこへでも参戦していく態勢づくり=「日米同盟」の侵略的な強化が狙いです。

 具体的には、米軍と自衛隊との基地の共同使用の拡大、演習と運用の一体化を推進。キャンプ座間での米陸軍戦闘司令部の新設、横須賀への原子力空母の配備、岩国への空母艦載機部隊の配備など基地の強化・恒久化計画が検討されています。

 こうした動きが進んでいるのは、日本が一貫して米軍事戦略の前進拠点とされ、今回の米軍再編の中でも海外最重要拠点に位置付けられているからです。

 沖縄・岩国の海兵遠征軍、横須賀・厚木の空母打撃群、三沢・横田などの航空宇宙遠征軍、佐世保の遠征打撃群…。地球規模で出撃する米四軍の遠征部隊がそろうのは日本だけです。日本の基地がなくなれば「地球の半分を管轄する米太平洋軍の能力の八割ぐらいが喪失する」(軍事評論家)という指摘もあります。

 日本政府による財政支援も、米軍が基地を手放さず強化を狙う根拠になっています。

 一九七八年度に日本政府が「思いやりの気持ちを持って」(金丸信防衛庁長官=当時)と始めた在日米軍への「思いやり」予算――。労務費の負担から始まり、施設建設費、水光熱費、訓練移転費へと拡大の一途をたどり、〇五年度までに総額四兆七千百二十八億円に達しています。

 米国防総省の「基地構造報告」によると、在外基地の資産価値上位三位までを在日米軍基地が占めています(表)。

軍事同盟解消が世界の流れ

 軍事同盟は前世紀が残した遺物になりつつあり、国連憲章に基づく平和秩序を目指す動き、仮想敵を持たない地域的な平和共同体の流れが世界の一大潮流になっています。基地を抱える地方自治体の基地返還要求もかつてなく強まっています。

 日本政府が通告するだけで、安保条約は終了します。「日米軍事同盟解消、独立・中立日本への転換こそ、世界史の大道」(日本共産党第三回中央委員会決定)です。


 ◆米軍基地の現況

 日米地位協定によると、米軍が使用する基地は(1)米軍専用施設(2条1項a)(2)米軍管理で自衛隊も使用(2条4項a)(3)自衛隊管理で米軍も使用(2条4項b)―に区分されます。(1)と(2)を合わせた数を見ると、沖縄が最も多く三十六カ所。面積では全体の75%を占めます。神奈川、東京、埼玉、千葉の首都圏にも二十六カ所と集中しています。


在外基地資産

 (1)嘉手納(沖縄県)   4618

 (2)三沢(青森県)    3919

 (3)横田(東京都)    3442

 (4)ラムステイン(独)  3128

 (5)トゥーレ(グリーンランド) 2781

 単位:100万ドル、2003年9月現在


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp