2005年4月19日(火)「しんぶん赤旗」

主張

難民保護

国際基準で人道的な処遇を


 「出入国管理及び難民認定法」の難民にかんする改正部分が五月に施行されます。入国後六十日以内となっていた難民申請の期限をなくし、申請手続き中は条件付きながら仮滞在を許可し、難民不認定への異議申し立てを審査する参与員制度を新設するなどの点が変わります。ただし、難民認定と入管行政は分離されず、難民申請者の収容の問題などは残されています。

受け入れ国の責務

 難民とは、人種、宗教、国籍、社会集団への帰属、政治的意見によって自国で迫害を受ける恐れが十分にあり、他国に保護を求め、その地位を認められた人です。「難民の地位に関する条約」に規定されています。さらに、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、戦争や紛争状態から逃れてくる人も難民とみなすべきだと考えていますが、難民の地位の認定、保護は受け入れ国が決めることになっています。

 日本は難民条約を批准しています。政府・法務省は条約にもとづき、その他の国際人権規約など難民の人道的扱いをとりきめた諸法規を十分尊重して対応する必要があります。

 難民と認定した人々に対し、条約に定められた保護を与えることは当然です。同時に、難民申請中の人々の処遇を、抜本的に改善することが重要な課題になっています。

 日本で昨年、難民認可を申請したのは四百人あまり。難民認定をうけたのは3%余、その他の人道的配慮などで在留を認められた人をあわせて8%程度です。

 このなかで、とくに申請手続き中の人々に対する処遇では、収容期間が長びく事例が相次いでいます。強引に強制送還されそうになった申請者が弁護士の申し立てによって空港で引きとめられた例もあります。

 政府・法務省は、非人道的な処遇を是正する措置を講じるべきです。

 日本の現行法制でも、難民申請者をかならず収容しなければならないわけではありません。UNHCRは、拘禁するのは例外的にし、住居、生活支援、健康保健等の十分な受け入れ体制を与えるべきだとしています。

 政府・法務省は難民申請者をむやみに収容しないで、受け入れ体制を提供するやり方を追求すべきでしょう。もちろん、申請者を危険にさらすようなことはすべきでありません。

 昨年夏、申請者の出身国(トルコ)を日本政府の職員が調査し、その申請者にかんする情報を出身国当局に知らせたことがありました。こうした行動は、申請者自身と出身国に残された親族などの安全を脅かしかねません。UNHCRは、出身国にいかなる庇護(ひご)申請情報も知らせないことを国際基準での原則にしています。

 今年一月十八日に法務当局が強制送還したクルド人父子(トルコ国籍)は、日本政府が難民と認めないものの、UNHCRは難民にあたるとみなしていました。父親は退去強制令に対し最高裁に上告しているさなかでした。難民条約は、難民を「生命または自由が脅威にさらされるおそれのある領域」に「追放しまたは送還してはならない」(三三条)と定めています。

人権に対する姿勢

 苦しい逼迫(ひっぱく)した状況から日本に逃れ、保護を求めてきた人々を人道的に処遇することは、人権と民主主義に対する日本の姿勢を示します。国際的な理解をえられる難民保護政策の具体化、改善が必要です。


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