2005年4月12日(火)「しんぶん赤旗」

主張

労働契約の法制化

これではリストラが加速する


 厚生労働省の研究会が、労働者の採用から出向・転籍、雇用終了まで労働契約のルールを法制化する中間報告をまとめ、大筋了解しました。

 労働契約をめぐるルールは判例に委ねられた部分が多いため、労働基準法とは別の法律をつくり、労使が自主的に労働条件を決定できるルールを示すといいます。その中には、働く者の権利を骨抜きにする方向が盛り込まれており見過ごせません。

安易な解雇誘発する

 例えば、解雇をめぐる紛争で裁判所が無効の判決を出しても職場に復帰させず、金銭解決ができる制度を検討することです。

 いまの労働基準法は、合理的な理由のない解雇は無効として規制しています。それがお金さえ払えば労働者を追い出せることになれば、安易な解雇を誘発します。

 労基法改正の際も、審議会の意見書に盛り込まれながら、批判が強く見送られたこの制度を、導入する何の理由もありません。

 労働条件の変更についての制度を設けることも重大です。企業に労働条件の変更権を与える案(認めなければ解雇)と企業が労働条件の変更か解雇かを迫った場合、異議を留保し、雇用を維持したまま裁判で争うことができる案を示しています。

 解雇を脅しにして労働条件の改悪を迫るリストラが相次いでいます。変更を拒否すれば解雇を認め、解雇がいやなら不利益な変更を認めて争えというのは、無法なリストラを追認するのと同じです。こんな不当な不利益変更の規制こそ必要です。

 ホワイトカラーを、労基法の労働時間規制から適用除外する「見直し」を検討し、労働時間など労使で自主的に決定できるようにする必要があるといいます。不払い残業がまん延しているホワイトカラーを規制から除外すれば、残業代なしにいっそう際限なく働かせることができます。必要なのは、長時間労働の規制や不払い残業の根絶です。

 いま労働条件の最低基準は労基法で定めて、守らせるために行政の監督指導や罰則があります。それを、労働契約のルールは「労使の自主的な決定」にまかせ、監督指導が及ばず、罰則もないように変えることは問題です。解雇の制限や労働時間の規制といった労基法の重要な柱が、空洞化することにもつながります。

 政府がなぜこうした方向を進めようとするのか。その背景には財界の要求があります。日本経団連は「労働契約法制は労使の自主的な決定と契約自由の原則を最大限に尊重しつつ、工場法の時代の遺制を引きずる労働基準法など…抜本的に改革する」ことを主張してきました(〇五年版経営労働政策委員会報告)。

 規制は極力なくして、労働条件引き下げなど「攻めのリストラ」を容易にし、国際競争力をさらに高めて高収益をあげようという狙いです。

安心して働けるルール

 労働者は企業に雇用されなければ生きていけない弱い立場にあります。だから「契約自由の原則」を修正して労働者を保護する法律ができました。憲法第二七条が「勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」と明記しているのもこのためです。憲法は働く国民に人間らしく生き、働く権利を保障しています。財界の主張は時代錯誤です。

 大企業を中心に、大幅な労働条件の切り下げ、大規模な出向・転籍、退職強要などリストラの横行は目に余ります。こうした無法を規制し、労働者が安心して働ける労働契約のルールをつくることこそ必要です。


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