2005年4月9日(土)「しんぶん赤旗」

公費負担 継続して

精神障害者ら 通院治療で訴え

署名行動に取り組む


 厚生労働省が国会に提出中の「障害者自立支援法案」には、うつ病や統合失調症などの精神障害者やてんかん患者の通院医療費公費負担制度を廃止し、現行5%の医療費負担を原則10%に増やすことが盛り込まれています(ことし十月から実施を予定)。「生活していくうえで通院治療は欠かせない」と全国精神障害者団体連合会(全精連)は、医療費公費負担制度の継続を求める要請署名に取り組んでいます。


 山梨県上野原市に住む野上敏彦さん(53)=仮名=は、そううつ病の治療を始めて十五年あまり。四週に一回、片道九百三十円かけてバスを乗り継ぎ、都内の病院へ通います。「規則正しい通院治療と服薬は、日常生活を送るうえで欠かせません」と話します。

収入月6万円

 公費負担制度が廃止されれば、現行五百円の負担が千円になります(医療費総額・月額一万円)。野上さんの収入は、障害基礎年金(二級)・月額約六万六千円のみ。自宅で独り暮らし、畑でつくる野菜で自炊し、ぎりぎりの生活です。

 「国は、金がないからというが、高速道路とか、ほとんど利用されない空港とか、無駄遣いが多い。それをやめれば、福祉や医療へ当てるお金はできる」と訴えます。

 都内病院に統合失調症で通院している土井恵子さん(41)=仮名=も不安を募らせています。二週に一回の通院で、診察に約二百五十円、薬に約二千二百二十円が必要ですが、区の医療費補助制度で、窓口で支払うお金はゼロ円です。

 収入は障害厚生年金・月額約十万八千円。月額二万五千円の格安のアパートで暮らしてはいますが、食費と銭湯代で、お金は消えてしまいます。

 「一割の医療費を負担しないといけなくなれば、どうやりくりすればいいのでしょう。外出せずに部屋にこもっているしか、できなくなってしまう」といいます。

病気の悪化も

 病気の発症で休職したり、仕事を辞めざるをえない精神障害者は多くいます。雇用義務制度の対象外とされ、JRや国内航空などの運賃が割引されないなど、他障害者に比べて利用できる福祉サービスが少ない現状もあります。無年金であったり就労の場も少ないことで、親や家族の援助で暮らす人もたくさんいます。厚労省が示している表(別掲)では、低所得な人ほど、より負担が大きくなる内容です。

 みずからも統合失調症で二週に一回通院している全精連事務局長の有村律子さんは、「精神障害の治療では、定期的な通院による医師との面談、継続した服薬が欠かせません」と強調します。

 「低料金で安心して、病院にかかれることが、こころの安定につながります。低所得の当事者が多く、お金がかかれば通院できない、しない人が増えるでしょう。ストレスで病気が悪化し、入院や引きこもり、事故や自殺など健康やいのちにかかわる重大事態も予想されます」と話します。

 全精連事務所には、署名用紙を増し刷りして約七百人分の署名を送ってきた会員もいます。約四千五百人分の署名を厚生労働省へ提出しましたが、さらに提出する予定です。 (川田博子)

障害者自立支援法が成立すると、精神障害者の通院医療費は

 〈住民税非課税世帯I(年収80万円未満)〉医療費の5%⇒同10%(上限2500円)

 〈住民税非課税世帯II〉医療費の5%⇒同10%(上限5000円)

 〈住民税課税世帯〉医療費の5%⇒同10%(重度かつ継続は当面、上限10000円)

 〈一定所得以上の世帯(所得税年額30万円以上)〉医療費の5%⇒同30%(重度かつ継続は当面、10%で上限20000円程度)



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