2005年3月28日(月)「しんぶん赤旗」

普天間→辺野古→機能分散?

沖縄 新基地見直し

結局 県内たらい回し


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 「あんなきれいな海を埋め立てて、何千億円もかけるなんて、どうかしている」。自民党の国防族議員の一人は漏らします。日米両政府が米海兵隊普天間基地(沖縄県宜野湾市)の「移設」を口実に進めてきた同県名護市辺野古沖への新基地建設計画――。県民の根強い反対世論を背景に計画は行き詰まり、在日米軍再編の日米協議では、その見直しが大きな焦点の一つになっています。(田中一郎)

 昨年八月に普天間基地配備のヘリが沖縄国際大学(宜野湾市)に墜落した事故で、同基地の撤去を求める県民世論はさらに強まっています。一方、辺野古沖の新基地建設は、今後十数年かかる見通しです。

 こうした中、二月十九日の日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、在日米軍再編の本格的な協議の開始を合意して以降、小泉純一郎首相はじめ日米双方の高官らから、辺野古沖の新基地建設計画の見直しを肯定する発言が相次いでいます。(表)

 政府は、在日米軍再編協議の詳細を明らかにしていませんが、新基地建設計画の具体的な見直し案もさまざまに報じられています。

 なかでも普天間基地の「機能分散」案が有力視されています。これは、同基地の機能を(1)ヘリコプター部隊のヘリポート機能(2)空中給油機の拠点機能(3)緊急時の部隊展開・物資集積機能――という三つに分け、沖縄県内などに分散移転するというものです。(図)

 一方で、日本政府内には「沖縄に代わりの場所がないから辺野古になった。(新基地建設の)基本計画を(閣議)決定したのは小泉内閣だ」(高官)として、計画の見直しに否定的な意見も少なくありません。

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ボーリング調査に向けた作業の強行に抗議する住民・漁民ら=16日、沖縄・名護市辺野古沖

機能は「沖縄に維持」

 いずれにせよ、これらに共通するのは、普天間基地の機能を基本的には沖縄に維持しようとしていることです。

 2プラス2の共同発表は「沖縄に関する特別行動委員会(SACO)最終報告の着実な実施が、在日米軍の安定的なプレゼンスにとって重要」と強調しました。SACO最終報告(一九九六年)とは、「普天間飛行場の重要な軍事的機能及び能力の維持」を前提に、沖縄県内に代わりの新基地を建設することを取り決めた日米合意です。

 今月十八日、在日米軍のライト司令官は記者団との懇談で「沖縄の人々への普天間基地の影響を解決する」としつつ、「同基地の非常に重要な作戦能力は保持する」と言明。「われわれはこの地域に普天間や辺野古のような施設が必要だ」と強調しています。

 2プラス2の直後、自民党や民主党の議員と会談したローレス米国防副次官は、普天間基地の「適切な移設場所を見いだすことが必要だ」と求めました。

 会談に出席した前原誠司衆院議員(民主)は、このローレス氏の発言について「もしSACOを見直すなら、日本の宿題としてどういう代替案を示せるのか、当該地域への説得を含め日本政府や政治家が泥をかぶるのか、ということが言外にある」と解説しています。

 米国は普天間基地の機能を維持する。辺野古沖の新基地建設計画を見直したいのなら日本側が案を示せ――。こうした米側の立場に縛られれば、見直し案も新たな“県内たらい回し”案にしかなりません。

「中国脅威」を口実に

 米国はなぜ、普天間基地の機能の維持にこだわるのか。

 政府高官は「米国は一昨年くらいまでは違ったが、それ以降は抑止力維持に傾いてきている。政治的な意味で、沖縄から米軍が退いた時に送ることになる中国へのメッセージを気にしているようだ」と解説し、米国内で台頭している中国「脅威」論を理由に挙げます。

 しかし、「台湾海峡問題への対処で沖縄駐留の(海兵隊)部隊がふさわしいのかという議論」(前出の政府高官)があり、実態としてもこの一年間、沖縄から普天間基地の部隊を含め主力部隊の多くがイラクに派遣され、不在でした。

 別の政府高官も「中国には日本を侵略する意図も能力もない」と断言。中国の「脅威」を口実にした「抑止力」論は、「日本防衛」とは無関係の議論です。

地元「憤怒に耐えぬ」

 移転先に報じられた沖縄県内の自治体や住民は、すでに反対の声を上げています。

 下地島空港を抱える伊良部町の町議会は米軍誘致もにらんだ自衛隊誘致決議を上げたものの、町民の猛反発にあって白紙撤回しました。嘉手納基地のある嘉手納町は「移転してくるのが米軍でも自衛隊でも、これ以上の(基地)強化は反対」の立場。キャンプ・ハンセンのある金武町も「今でさえ、基地負担は重い」と反発しています。

 沖縄県の基地対策室は「全国面積の1%も満たない島に米軍基地の75%が押し込められているのに、県内のこっちはどうか、あっちはどうかと言われるのは憤怒に耐えない」と語ります。


普天間基地の代替新基地建設にかかわる最近の日米の主な発言

【米側】

 ・「適切な移設場所を見いだすことが必要だ」(ローレス国防副次官、「朝日」2月24日付夕刊ほか)

 ・「辺野古の問題についてはチャレンジしなければならない。米軍再編の中で(返還の)プロセスが早まるだろう」(ローヘッド太平洋軍副司令官、沖縄タイムス3月19日付夕刊)

 ・「普天間基地の能力を(沖縄に)持ち続けることは重要だ。…われわれは、この地域において、普天間のような施設や辺野古のような施設を必要としている」(ライト在日米軍司令官、3月18日)

【日本側】

 ・「(新基地建設は)なかなか進んでいないことも事実。全体のなかで、そういう点も踏まえて、どうすべきか検討しなくてはならない」(小泉純一郎首相、3月23日)

 ・「針の穴みたいな小さな穴かもしれないが、もしいい案が出てくれば(見直しは)当然」(大野功統防衛庁長官、3月1日)

 ・「移設計画がスムーズに進展していないのは明らかであり、この際きちんと現状をレビュー(再検討)し、そのうえで判断する時期にきている」(自民党の額賀福志郎議員、「毎日」2月21日付)


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